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生前贈与で相続税対策をする場合のデメリット

 2017/06/02 相続対策
この記事は約 11 分で読めます。

相続税対策として最もメジャーなのは生前贈与でしょう。

早い段階から毎年暦年贈与の非課税枠である110万円を贈与する、リフォーム・リノベーション前の不動産や損金を出すなどで株価を下げた持ち株などを相続時清算課税制度の活用で贈与するなど、相続税対策としての生前贈与の仕方は様々です。

しかしこのような相続税対策としては優秀な生前贈与ですが、一歩間違えると「こんなはずじゃなかった…」となってしまう危険性があるのです。

 

例えば生前贈与で過度に財産を子供に渡してしまったとします。

相続税対策としては「これでいつ相続が発生しても安心!」という状態になるかもしれませんが、ご両親の人生はまだまだ続きます。

「残りの余生は旅行に行ったり美味しいものを食べたりと、『豊かな老後』を満喫したいな」というような想いがあったとしても、相続対策で生前贈与をし過ぎてしまえば手元には僅かな財産しか残りません。

そうなってしまえば『豊かな老後』ではなく、『慎ましやかな老後』にしかならなくなります。

 

相続税対策だけを考えて生前贈与をし続けた結果、贈与をした相手の態度が急変してしまい「あんな奴に贈与するんじゃなかった…」ということになることもあります。

生前贈与はただ行えばいいというものではなく、「両親の今後の生活」や「どういう相続にしたいか」などをよく考えて計画した上で行わなければ、節税以外の面でトラブルの原因となってしまうでしょう。

そこで今回は、相続税対策として評価されている生前贈与のデメリット・注意点を紹介します。

 

長男
相続税対策として生前贈与をするよう父に勧めているけど、首を縦に振ってくれない…
父があまり深く考えずに贈与をしているように見えるけど、大丈夫かな…

生前贈与に抵抗を感じているのはデメリットに不安があるからかもしれませんし、現在生前贈与を二つ返事で承諾している場合デメリットのことを全く考慮していないからかもしれません。

なぜ生前贈与が対策になるのか、なぜ生前贈与が危険なのかを意識した上で、相続税だけでない『相続対策』として生前贈与を活用するようにしていきましょう。

 

 

そもそも贈与税とは

贈与税は贈与税法というものが存在するわけではなく、相続税法の中で規定された税金です。

これは生きている内に自分の財産を子供たちに全て贈与することで相続税から逃れようとすることを阻止する為に作られた、『相続税を補完する為』の税制度だからです。

とはいえ贈与税の負担で上の世代が下の世代に財産を渡せなくなるということは、上の世代に財産が溜まったままになってしまいます。

そのため贈与税は祖父母から子供、孫への贈与に関してはそれ以外への贈与よりも税率の上がり方が緩やかになっていたり、相続時清算課税制度などの特例を設けることで下の世代への贈与にメリットを作り出しています。

 

 

生前贈与のメリット

暦年贈与の非課税枠を毎年贈与すれば贈与税はかからず、財産を減らすことが出来る

贈与税には110万円の非課税枠が存在します。

それ以降の贈与に関しては金額が高くなればなるほど税率が上がる累進税率が採用されており、最高税率は55%と非常に高くなっています。

 

その為早い段階から毎年110万円の贈与を続けることで、贈与税を支払わずに財産を減らすことが出来るのです。

亡くなる(相続開始の)3年以内に生前贈与された財産は相続財産に含めて相続税を計算してしまいますが、子供の配偶者や孫などの法定相続人ではない人物への贈与はその限りではありません。

相続税の基礎控除額以下、小規模宅地の特例等の活用で相続税額を許容範囲内に抑えられる額まで贈与を続けると、相続税対策になります。

 

 

将来的に評価額が上がる財産は相続時清算課税制度で贈与を

所有株式や不動産などで「今後評価額が上がる」ことが見込める財産は、相続時清算課税制度を利用して生前贈与するといいでしょう。

相続時清算課税制度は贈与者から2,500万円までの生前贈与に関して非課税となり、それ以上の贈与額には一律20%となります。

相続時清算課税制度は暦年贈与から切り替えることで利用することが出来ますが、切り替えるとそれ以降は暦年贈与に戻すことは出来なくなるので、相続時清算課税制度に切り替える際はよく考えるようにしましょう。

 

相続時清算課税制度という名称の通り、贈与された財産は相続開始時に相続財産に含めて相続税を算出します。

2,500万円の現金を相続時清算課税制度に切り替えて贈与した場合、相続発生時に被相続人の財産に生前贈与された2,500万円を加えて相続税を計算するので、この制度単体での節税効果はそこまで高くありません。

しかし相続税を計算するときの評価額は相続発生時ではなく贈与時の評価額となるので、将来的に値上がりする財産を相続時清算課税制度で生前贈与すると、贈与したときの安い評価額で相続税を計算することが出来ます。

 

 

収益財産を生前贈与すれば納税資金の確保がしやすい

相続時清算課税制度は節税効果があまりない制度と言われることがあります。

確かに贈与財産が値上がりする場合でなければ、結局相続財産として含めて計算されてしまう以上節税効果はあまりないでしょう。

しかし場合によっては、節税効果以上に優秀な制度になるのです。

 

賃貸マンションやアパートなどの収益不動産や株式などを生前贈与すると、当然ですがそれ以降の収益は贈与をされた受贈者のものとなります。

その為「父の財産は不動産ばかりだから、相続税が支払えるか心配…」というような場合に収益財産を生前贈与することで、その収益を相続税の納税資金として備えることが出来るのです。

相続時清算課税制度であれば非課税枠が2,500万円、それを超える部分は一律20%となるので贈与時の負担は少なくて済みます。

 

そして結局相続財産に含めて課税するといっても、そのときには賃貸マンションであれば賃料収入がという利益を得ているので、納税資金は確保しやすいのです。

相続財産で不動産の割合が高いと「不動産を売却しなくては納税資金が確保できない…」ということが少なくないのですが、相続時清算課税制度を有効活用することで同じ納税額が必要になるとしても納税のしやすさが大きく異なるのです。

 

 

生前贈与のデメリット

このように、生前贈与には大きなメリットがあるのですが、注意すべき点が多いのも事実です。

生前贈与の意味が薄いということもありますし、生前贈与をしたことが原因でトラブルになることもあります。

更にいえば、遺される側を想って相続税対策をした結果ご両親の大切な人生が大きく乱れてしまうこともあるのです。

 

 

そもそも生前贈与が必要ないケースも

元々相続税には「3,000万円+(相続人の数×600万円)」の基礎控除額があり、これ以下の相続財産であれば税務署への申告は必要ありません。

また、相続税には小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減など様々な控除があります。

小規模宅地の特例であれば条件を満たせば一定面積の課税価格を50~80%減額することが出来ますし、配偶者控除は配偶者の法定相続分(又は1億6,000万円)までであれば配偶者に相続税はかかりません。

このような制度を活用することで、生前贈与をしなくても税負担を大きく抑えることができるのです。

控除を利用して納税額が0円になる場合は税務署への申告は必要となるので注意しましょう。

 

 

生前贈与をし過ぎると老後の人生が大変に…

既に控除の活用などで納税額を払わなくてよくなっている状況であるにもかかわらず生前贈与を続けてしまうと、今度はご両親の生活が質素になってしまいます。

これまで60~70年頑張ってきて、これからの人生は夫婦で美味しいものを食べたり旅行に行ったり、好きなことをして生活がしたいと考える方は多くいます。

 

にもかかわらずその為の資金まで贈与してしまっては、好きなことをして生活するという『華やかな人生』にすることは難しくなってしまうでしょう。

相続税には配偶者控除がありますし、今は年金だけではゆとりある生活をすることは難しい時代になっています。

ご両親がどのような人生を歩んでいきたいかも含めた相続対策をしなければ、相続対策をした結果ご両親が辛い人生を送らなければならなくなってしまうリスクがあるのです。

 

 

後々特別受益として問題に…

生前贈与をする際、誰か1人に多く生前贈与をした場合にはそのことがトラブルの原因となることもあります。

特に要望がない場合法定相続分で財産を分けることになることが多いですが、生前贈与で各相続人への贈与にバラツキがあると、法定相続分での分割では不平等になってしまうのです。

このことが原因で特別受益などの制度を持ち出し、相続が争族に発展してしまうこともあるのです。

 

 

贈与してしまうと管理運用に関われなくなるかも…

親が会社の株式や賃貸マンションなどの生前贈与に難色を示す原因として、その後の管理運用に不安を感じることが挙げられるでしょう。

「まだまだ自分は頑張れるし、今息子に託すわけにはいかない!」「事業承継をした方がいいのは分かるけど、まだ息子は頼りないからなぁ」といったような、『生前贈与で事業承継した方がいいのは分かるけど、まだそうするわけにはいかない』という想いがあると、行為の重要性はわかっていても承諾は出来ないということになってしまいます。

また、「自分の財産を贈与することで現在の親子関係に変化があるのでは?」というような不安も出てくるでしょう。

 

息子に子供がいない場合などでは、「自分が受け継いだ(又は自分が築きあげた)財産が別の家系に流れてしまう…」という不安も出てきます。

このような不安を抱えている父に生前贈与の重要性を話しても、頑なになってしまうだけです。

単純に事業承継として自社株や収益不動産を贈与するための納税資金などが確保できないということもありますが、その後の管理運用などでの不安が原因であることが多く、相続『税』対策ではこの不安は解消できないのです。

 

この場合であれば、家族信託と併用して「財産は贈与するけど管理運用は父が行う」というような相続対策が考えられます。

贈与では解消できないことも家族信託などの制度を使うことで解消できる可能性は高いので、相続税対策ではなく相続対策をするように心がけましょう。

相続対策はしたいけど自分はまだやれる!という場合の家族信託

 

 

子供の預金通帳に毎年振り込むのは贈与ではない

生前贈与の代表的な例の一つに「子供の名義預金」がありますが、税務署の税務調査に引っかかるケースのほとんどは子供・妻の名義預金です。

子供の名義預金の多くは「子供に教えると無駄遣いするから、黙って贈与しよう」というようなもので、民法上贈与は成立していません。

贈与が成立していない以上、子供の名前の預金であっても実質的には親の財産ということになってしまうのです。

 

妻が夫の給与をやりくりして貯めたへそくりも、「お金の出所が夫の給与である以上そのへそくりは夫の財産」という扱いになります。

このような贈与になっていない財産を「贈与をした」という認識で相続財産に含めずにいた結果、税務調査の対象となることが多いのです。

子供に通帳と印鑑を渡して贈与契約書を作成するといった「名義預金にならないようにするポイントを抑えた預金通帳」を作成するか、家族信託で「みなし贈与」という形にして隠れて贈与するなどの方法をとるようにするか、最初から相続財産に含めて相続税の計算をした方がいいでしょう。

 

 

まとめ

いかがでしょうか。

生前贈与は相続税対策として確かに優秀ですが、ご両親のこれからの人生やご両親の想いを考慮した相続にする為には、「相続税対策」ではなく相続税の対策も含めた「相続対策」を行う方がいいでしょう。

相続サロン多摩相談センターには日本相続コンサルティング協会の公認相続コンサルタントの資格を持ち、家族信託普及協会の家族信託コーディネーターの認定を受けた、宅地建物取引士の資格を持つ相続と不動産の専門家が在籍しています。

相続について何か疑問に思うこと、不安に感じることがあれば是非ご相談ください。

 

相続サロン多摩相談センターへの相談はこちらからどうぞ

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