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後見制度ってなに?成年後見と任意後見の違いと注意点

 2017/05/15 成年後見制度
この記事は約 14 分で読めます。
息子
ここ1年の間で、父さんが預金通帳を見つけられずに3回も再発行してる…

両親が年齢を重ねていくにつれて、体力の低下や物忘れなどの記憶力が低下しているのを感じて「父さんも歳をとったなぁ…」と実感することはありませんか?

これは加齢に伴う老化現象なので仕方のないことではあるのですが、そのまま進行して判断能力がなくなってしまうと、預金を下ろしたりといった行為が出来なくなってしまいます。

これは本人が預金の下ろし方を忘れてしまうからということではなく、例えあなたが「父の代理」といって定期預金の解約や預金の引き出しをすることに関しても出来なくなります。

 

判断能力が低下していることが金融機関に判明した場合、後見人の申し立てを求めてきます。

判断能力が低下した人は「母さん助けて詐欺(振り込め詐欺)」や「悪徳商法」に引っかかりやすくなってしまいますし、家族が本人の判断能力が無いことを悪用して「父さんがフェラーリ買っていいって言ったから買っちゃった」といった本人の財産の使い込みのリスクも高くなります。

金融機関は本人の財産を守る責任がありますので、このようなことにならないよう判断能力のなくなった本人(被後見人)の代理権を持ち、被後見人の財産を守る立場を持つ後見人の申し立てを求めてくるのです。

とはいえその「後見人の選任を家庭裁判所に申し立ててください」と金融機関に言われるがまま、後見制度についてよく分かっていないまま流れで家庭裁判所に申し立てて、成年後見人の選任をしてしまうのはリスクがあります。

 

それは、言われたときの後見制度と実際の後見制度にギャップが出てしまうと「こんなはずじゃなかった…」となってしまうことが多いのです。

そして、後見制度には「判断能力がなくなってしまってから」申し立てをする法定後見制度の他にも、判断能力がある内に契約をする任意後見制度の2種類あります。

判断能力がなくなったときの対策をしない場合にしても事前に成年後見制度がどんなものかを理解しておいた方がいいですし、事前の対策として任意後見制度を利用するというのも有効な手段です。

 

そこで今回は

後見制度とは何か?

任意後見制度と成年後見制度の違いは?

ということを紹介します。

 

息子
父のこれからが心配だし、何か対策を立てたほうがいいのかな
最近母の物忘れが多くなった気がするし、そろそろ何かした方がいいかな
銀行から後見人を申し立ててと言われたけど、後見人ってなに?

という場合に読んでみてはいかがでしょうか。

 

 

成年後見制度とは

認知症、知的障害、精神障害などで判断能力が不十分・ないとされる人々は不動産、預貯金等の財産管理、介護サービス、施設への入居、遺産分割協議等自分で行うことが難しくなります。

  • 訪問販売でどう考えてもいらないようなものを「いいものだって言ってた」といって購入してしまっていた
  • 弟に言われるがまま弟の欲しいものを購入して、生活費が無くなってしまっている
  • 元気なときに「実家は先祖代々続く武家屋敷だから絶対受け継がせていくんだ」といっていた自宅を売却するような遺産分割協議に言われるがまま合意した

悪徳商法は判断能力があった状態でも引っかかってしまう方は多いので、判断能力が無い状態ですとカモがネギを背負ってきているようなものになります。

 

また本人の意思能力がなくなっている状態ですから、誰かから「こうだ」といわれたことに対して正確な判断をすることは出来ません。

周りに言われるがままお金を使ってしまったり、話し合いに合意してしまったりと生活に支障が出てしまう危険性があります。

後見人が選任された後であれば、本人(被後見人)の売買などの法律行為は後見人が代理権を持ち行うこととなり、被後見人が悪徳商法に引っかかってしまった場合でも、その契約を無効にすることが出来ます。

後見制度はこのような判断能力・意思能力が不十分な方を保護、支援する為の制度です。

成年後見制度は法定後見制度、任意後見制度に分けられています。

 

 

法定後見制度

法定後見制度は既に認知症を発症している等既に判断能力が不十分となっている場合の後見制度です。

家族信託や遺言、任意後見制度のような本人の判断能力がしっかりしているときでなければ利用することが出来ない制度ではなく、特に対策をしていなくても本人が認知症になってしまった後に利用する制度になっています。

「後見」「保佐」「補助」に分けられており、判断能力の程度に応じた制度の利用ができます。

本人の判断能力が不十分になった場合に申し立ての出来る人物(本人・配偶者・四親等以内の親族・検察官・市町村長など)が家庭裁判所に申し立てることにより、家庭裁判所は

  • 判断能力が欠けていることが通常の状態(一時的に判断能力が戻ることがあっても、一日の大半は判断能力が無い人)の場合は「後見人」
  • 判断能力が著しく不十分な場合には「保佐人」
  • 判断能力が不十分な場合には「補助人」

を選任します。

後見人等の中で補助人は新しく設けられた項目で、後見、保佐の対象になる程度には至らないが判断能力が不十分とされた人物が対象になり、3種類の中で唯一申し立てに本人の同意を必要としています。

 

 

任意後見制度

任意後見制度は、本人に判断能力がある内に、判断能力が不十分になってしまった場合に備えて任意後見人をあらかじめ選任する制度です。

契約を結んで判断能力が十分あるうちは定期的に訪問したり電話をして安否確認をする程度で、判断能力が不十分になってしまった後に後見人となる人物(又は配偶者、4親等以内の親族)が家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てをし、任意後見監督人が選任されてから後見人として活動します。

財産管理や自らの生活、療養看護に関する代理権を与える任意後見契約を公正証書(公証人の作成する書類)で結び、支援の内容を定めた目録を代理権目録と呼びます。

任意後見監督人は任意後見人が不適切な財産管理や不正な事務行為など任意後見契約で定めた代理権目録に沿わない、つまり本人の意思にそぐわない行為をしていないように監督します。

 

 

法定後見制度と任意後見制度の違いは?

法定後見制度と任意後見制度の違いとしては

  • 判断能力がある内に契約するか判断能力がなくなってから申し立てをするか
  • 後見人が本人の意向に沿う人物になるかどうか
  • 契約内容を柔軟に決められるか否か

等が挙げられるでしょう。

 

判断能力がある内に契約するか判断能力がなくなってから申し立てをするか

任意後見制度は本人に判断能力がある内に任意後見契約を結ぶ必要があるので、判断能力のある元気な内でしか結ぶことは出来ません。

対して法定後見制度は認知症になって判断能力がなくなってから家庭裁判所に申し立てをするので、元気な内に対策をしなくても利用することが出来ます。

 

 

後見人が本人の意向に沿う人物になるかどうか

任意後見契約は後見人になる人物と本人との契約なので、確実にその人が後見人となります。

これに対して法定後見人の場合、申立書に後見人の候補者を記載する欄がありますが、後見人の決定は家庭裁判所が行う為要望通りになるとは限りません。

裁判所の公表資料である「成年後見関係事件の概要(平成28年度)」によると、成年後見人と被後見人の関係として配偶者や子供、親や兄弟姉妹などのような親族は28.1%となっています。

残りの71.9%は弁護士や司法書士、社会福祉士といった第三者が選任されています。

本人の財産や申し立ての理由、後見人と被後見人の利益が相反していないかといった要素で家庭裁判所が判断しますので、「自分が後見人になりたい!」という場合には任意後見のほうが適しているでしょう。

 

 

契約内容を柔軟に決められるか否か

法定後見制度は既に本人の判断能力がなくなっているということで、本人の財産の保護、及び身上監護が厳重に決められています。

これに対して任意後見制度では、本人に判断能力がある状態で契約をするので、本人の意思により契約内容での信託契約を結ぶことが出来るようになっています。

法定後見制度を利用すると孫への養育費・教育費の贈与のような本人の為以外の財産の利用、賃貸物件の賃貸経営といった財産の資産運用は出来なくなります。

 

しかし任意後見制度の場合支援内容の中に孫への贈与、賃貸物件の管理運用など法定後見制度では出来ない相続税対策となる行為も、代理権目録で定めておけば行うことが出来ます。

後見人の報酬も法定後見制度では裁判所が定めるのですが、任意後見制度の場合は契約時に当事者間で定めることが出来ます。

任意後見制度の場合本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所に任意後見監督人選任し、後見人は後見契約に沿うよう任意後見監督人の監視・支援を受けるようになります。

 

 

成年後見制度を利用するときに注意したい点

判断能力のなくなってしまった本人の所有する預金通帳からお金を下ろしたり、定期預金の解約といった行為をする際には後見人の選任をしなければ出来ないのですが、そこで家庭裁判所に申し立てに向かう前に、青年後見制度について知っておきたいことがあります。

特に「定期預金の解約がしたいから後見人をつけよう」「遺産分割協議をしなければいけないから後見人をつけよう」といったその場で必要になったから成年後見制度を利用したいというのであれば、

  1. 成年後見人は選任されると原則後見人が亡くなるまで続けなければならない
  2. 法定後見人を選任すると相続対策・自宅の売却やアパート経営など財産の資産運用・生前贈与が出来なくなる
  3. 成年後見人は被後見人の財産の管理などを裁判所に監視される
  4. 成年後見人、任意後見監督人に支払う報酬などの負担
  5. 遺産分割協議の際、子供は親の成年後見人として活動出来ない

この5点だけでも理解しておいた方が良いでしょう。

 

成年後見人は選任されると原則後見人が亡くなるまで続けなければならない

定期預金の解約のような「その場で必要になったから後見人を選任しよう」となった方の中で、この後見人となったら原則辞めることが出来ないという点を失念している方が多いです。

成年後見人の申し立てで裁判所から説明を受けるはずなのですが、「預金を解約するために必要」と思っているとこの点が頭に残らないという方が多いです。

成年後見人は正当な事由(高齢や病気など成年後見人の仕事が継続で気無い場合)がなければ辞任することは出来ません。

その為「預金を解除するまで」のつもりで成年後見人になってしまうと、その後も成年後見人としての義務を果たさなければならなくなります。

 

 

法定後見人を選任すると相続対策・自宅の売却やアパート経営など財産の資産運用・生前贈与が出来なくなる

成年後見制度は本人の財産を守る為にあり、家族の為ではありません。

その為生前贈与のような「家族の為」となる行為は出来ませんし、相続税対策・相続対策となる行為も行うことが非常に難しくなります。

その他遺産分割協議にて「母さんはもうあまり財産を使うことがないから、母さんの相続分は0円にしよう」というような行為も「本人が受けるはずだった利益」

 

任意後見制度であれば契約内容に沿った資産運用などは出来ますが、契約内容から漏れた事項に関しては法定後見同様行うことは出来ません。

認知症などで判断能力がなくなった段階で資産運用は出来なくなってしまい任意後見制度の利用も不可能になってしまいます。

家族信託や遺言などの他の相続対策に関しても判断能力がなくなった場合できなくなってしまいますので、相続対策、相続税対策を考える場合には元気な内に行う必要があるでしょう。

 

 

成年後見人は被後見人の財産の管理などを裁判所に監視される

法定後見人は家庭裁判所に直接監督され、大きな売買などの際には事前に裁判所に許可を求めなければならなくなったり、後見事務報告書などの裁判所に定期的な報告義務があります。

このような事務作業の煩雑さを、成年後見人が亡くなるまでの期間続けなければいけなくなるのです。

任意後見人であっても裁判所が選任する任意後見監督人に監視されていますし、裁判所への報告義務もあります。

とはいえ「任意後見監督人を選任する前に好き勝手に本人の財産を使った」などの事例もありますので、任意後見契約は「本当に信頼できる人物」と契約するようにしましょう。

 

 

成年後見人、任意後見監督人に支払う報酬などの負担

任意後見人に対しての報酬は当事者間で定めることが出来ますが、任意後見監督人に対する報酬を支払う必要がありますし、法定後見人は裁判所が報酬を決めます。

この報酬は被後見人の財産から出されるものですので、成年後見制度を長く利用すればするほど報酬の負担は重くなっていきます。

 

 

遺産分割協議のとき子供は親の成年後見人として活動出来ない

遺産分割協議で成年後見人は「本人が得るべき財産」を原則主張しなければならないので、法定相続分を主張します。

しかし被後見人が母である場合、他の相続人としては「このまま母が財産を取得しても相続を待つだけだし、母の相続分をゼロにして次の相続に備えたい…」と考えるかもしれません。

このとき成年後見人が子供で同じく相続人である場合には

相続人としての立場
自分は母の相続分を0円にして相続対策をし自分の利益を増やしたい
成年後見人としての立場
成年後見人なので母の法定相続分はしっかり主張しなければならない

と利益相反(どちらかの利益はもう片方の不利益となる状態)になってしまい、成年後見人としての役割を果たせなくなる危険性があります。

 

その為この利益相反の状態になっているときは、その場のみの特別代理人の選任が必要となるのです。

なお、後見監督人が存在する場合後見監督人が特別代理人の役割を果たすので、任意後見制度の場合は任意後見監督人に特別代理人を依頼すればいいでしょう。

 

 

まとめ

いかがでしょうか?

成年後見制度は身上監護、本人の財産の管理をする上で重要な役割を持ちますが、「定期解約をしたいから」というような「その場のみ成年後見人になろう」ということはできません。

その為事前に相続対策をしておいたり、成年後見制度を利用するとしても柔軟に契約内容を設定できる任意後見制度の活用を考えた方がいいでしょう。

しかし任意後見制度にしてもその他の相続対策にしても、「元気な内」でしか行うことは出来ません。

 

「父はまだ元気だから大丈夫だろう」というような考えで相続対策を後回しにしてしまうと、相続対策が一切出来ない状態になってしまう危険性もあるのです。

相続サロン多摩相談センターでは、成年後見制度だけでなく家族信託など他の制度も含めた相続に対する専門知識を持った相続コンサルタントが在籍しています。

最近認知度が上がっている家族信託を含めた、総合的な相続対策を提案することが出来ますので、是非ご相談ください。

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