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成年後見人って何?私はなれるの?

 2017/07/18 成年後見制度
この記事は約 15 分で読めます。

メディアなどで「進む高齢社会」が取り上げられているように、平均寿命が延びるなどの影響で日本は高齢社会が進んでいます。

平均寿命は延びても健康寿命はそこまで延びておらず、認知症や脳梗塞の後遺症などで意思能力がなくなってしまう高齢者も増えてきています。

意思能力がなくなってしまった高齢者は、普段であれば気付くような不利益などにも気付くことはできません。

そのため「幸せを呼ぶ壷」なる数十万円もする壷に手を出したり、遺産分割協議で近くにいる相続人に言われるがままになってしまうリスクが高くなります。

 

悪徳な訪問販売は健常者であっても引っかかることが少なくないので、意思能力がなくなっている方であればなおさらでしょう。

意思能力のない方の売買契約であれば通常無効なのですが、「実際にその時点で意思能力がなかった」ということを証明するのは難しいのです。

意思能力がないことを証明できず泣き寝入りにならないようにするため、高齢者を守る制度として「成年後見制度」が存在します。

 

メディアによっては

「成年後見制度を悪用して、被成年後見人(本人)の財産を家族や弁護士などが使い込んだ」

というケースを取り上げており、成年後見制度にあまり良いイメージを持っていないかもしれません。

実際にそのようなケースは存在し、その対策として信託監督人の選任や後見制度支援信託の利用を義務付けることが増えています。

成年後見制度自体は意思能力のない方の財産を守る優秀な制度であり、正しく成年後見制度を活用することで、意思能力がなくなってしまった親の財産を強固に守ることが出来ます。

 

 

成年後見制度とは

成年後見制度は、認知症や脳梗塞の後遺症などにより意思能力がなくなってしまった方(被成年後見人)を、家庭裁判所が選ぶ援助者が保護する制度です。

被成年後見人の代わりに成年後見人が契約行為や法律行為を行うことで、生活や医療、介護の支援・保護することが出来るのです。

この成年後見制度により、判断能力のなくなった方が不利益をこうむらないようにすることができるのです。

 

また成年後見制度には後見の他にも保佐補助という段階があり、判断能力が「ない」のではなく、「低くなった」ことにより普段の私生活に不安を感じてしまうという場合でも利用できます。

その場合であれば不動産の売買など金額の大きな売買契約などに関してサポートを受けつつ、普段の買い物などは自分で出来るようになります。

このように成年後見制度を利用することで、社会福祉にとって重要なノーマライゼーション(障害の有無に関わらず同じように生活できる社会理念)の実現の補助となるのです。

 

成年後見制度の種類

成年後見制度には意思能力の状態によって後見・保佐・補助という段階がある以外にも、任意後見制度というものがあります。

任意後見制度は意思能力が低下してから利用することになる成年後見制度と違い、元気な内から「私の意思能力がなくなったら後見人になってね」と契約します。

なお任意後見制度ではない、後見・保佐・補助の段階があり被成年後見人の意思能力が低下してから利用する制度を、法定後見制度といいます。

任意後見制度は元気な内に、本人のある程度本人の意思を反映させた契約内容にすることが出来ます。

法定後見制度は事前の認知症対策などは必要ありませんが、本人の財産を保護する性質が強く融通が利かない制度になっています。

 

 

申し立てをするにあたって最初にしなくてはいけないこと

親が認知症などで意思能力がなくなってしまい、成年後見制度を利用することを考えた場合、最初に成年後見用の診断書を主治医に作成していただく必要があります。

意思能力等の判断となるので

「精神科や神経内科などでなければいけない」

と感じてしまうかもしれませんが、普段お世話になっている主治医で問題はありません。

また後見の申し立てでは、医師が作成してくれる診断書であっても差し支えはありません。

しかし診断書付票や鑑定連絡票が必要になりますし、成年後見用の診断書の「判断能力についての意見」で

  • 自己の財産を管理・処分することができない(後見相当)
  • 自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である(保佐相当)
  • 自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある(補助相当)
  • 自己の財産を単独で管理・処分

という選択肢のどれにチェックがつくかで、申し立てるのが後見になるか補佐・補助になるかが決まりますし、成年後見用の診断書のほうが申し立てる人にとってわかりやすいでしょう。

 

成年後見用の診断書はあなたが書式を入手する必要はなく、

「成年後見を申し立てたいので、成年後見用の診断書を作成して欲しい」

と依頼すれば医師が作成してくれます。

基本的には主治医に依頼をしますが、医師によっては成年後見制度についてあまり理解していない方もいらっしゃいます。

そのような場合は、他の医師に依頼することも考慮したほうがいいでしょう。

 

 

どの家庭裁判所に、誰が成年後見制度を申し立てることが出来るか

被成年後見人となる本人が、実際に住んでいる住所を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。

そのため「住民票は札幌市のままだけど、実際に住んでいるのは多摩市だ」という場合には、東京家庭裁判所に申し立てることになります。

 

成年後見制度を申し立てるときに

近所の和田さんが自分の家が分からずに徘徊して大変だったから、成年後見制度を申し立てようかな

ということは出来ません。

申し立てが出来るのは

  • 本人
  • 配偶者
  • 4親等以内の親族※図参照
  • 法定後見人
  • 任意後見人
  • 市区町村長

などに限られます。

 

この中で市区町村長だけが浮いているような気もしますが、身寄りのない方の成年後見を開始する必要があるときなどで重要になります。

実際に申し立てをする方で一番多いのは、本人の子供で全体の約3割を占めます。

しかし実は、その次に多いのは市区町村長です。

それだけ成年後見制度の利用が必要でありながら、身寄りがないなどの理由で利用できない高齢者が増えているということでしょう。

 

 

成年後見制度の申し立てに必要な費用

最初の診断書の費用の他に

  • 書類作成や収入印紙・切手代などの雑費が1万円前後
  • 精神鑑定が必要となったときの鑑定料5万円(~10万円になってしまうこともあります。)

というような費用が必要となります。

状況によって必要な額は違うのであいまいになってしまいますが、この程度を考えればいいかと思います。

 

 

成年後見制度を申し立ててから成年後見人の選任までの期間は?

「遺産分割協議をしよう」となってから成年後見制度を申し込もうとしたときに

今申し込むと、いつごろ協議を始められるんだろう…

と不安になるかと思います。

成年後見制度の申し立てをした場合、一昔前であれば申し立ててから6ヶ月かかってしまうような

「申し立ててから数ヶ月かかるのが当たり前」

というような状況でした。

 

しかし近年では申し立ててから選任されるまでの期間は短くなっています。

平成28年度では、申し立ててから成年後見人が選任されるまでの期間が1ヶ月以内という方が45.5%となっています。

ほぼ半分は1ヶ月以内で終わるようになっていますから、今後もそのようなケースが増えていくでしょう。

1ヶ月以内に終わらないようなケースでも、2~3ヶ月以内には成年後見人は選任されることが多いでしょう。

 

 

成年後見人にはどんな人がなるの?私はなれるの?

任意後見制度の任意後見人は、基本的に本人と相手が合意し契約さえしていればどなたでもなれます。

最終的な決定は家庭裁判所ですが、法定後見人でも申し立てのときに、誰に成年後見人になって欲しいのか希望を出せます。

とはいえどんな人であっても成年後見人になれるかというと、残念ながらそうではありません。

成年後見制度で後見人となるためには、最低限の条件が存在します。

 

  • 未成年者
  • 過去代理人などであることを家庭裁判所に解任されたことがある人
  • 破産者
  • 被後見人となる人に訴訟したことがある人
  • 行方不明者

(民法847条)

 

このような人に関しては、成年後見人に選ばれることはないでしょう。

破産者は手続き中に関しては成年後見人になれませんが、手続きが終了し面積許可がでさえすれば成年後見人になる資格は復活します。

とはいえ家庭裁判所が成年後見人を選任する上で、破産した事実はどうしてもマイナスの印象になってしまうでしょう。

 

また本人の家族が成年後見人に選任される場合

  • 後見監督人
  • 後見制度支援信託

という、成年後見人が制度を悪用しないようにする制度を利用することになります。

このときの後見監督人は、成年後見人の条件に加えて後見人の家族がなることは出来ません。

一般的には弁護士や司法書士など、士業の方がなることが多いです。

 

成年後見人としては最低限の制限しかありませんが、実際に成年後見人として本人の家族が選任されるケースはあまり多くありません。

最高裁判所事務総局家庭局の「成年後見関係事件の概況(-平成28年1月~12月-)」によれば、被成年後見人(保佐人・補助人含む)の親族(配偶者・親・子・兄弟姉妹)が成年後見人に選任されたケースは、全体の28.1%程度となっています。

平成25年度では家族が成年後見人となるケースは全体の42.2%でした。

しかし年々家族が成年後見人となるケースは少なくなった結果、全体の28.1%になってしまいました。

家族が成年後見人に選任されないケースのほとんどは、士業(弁護士・司法書士・行政書士・社会福祉士・税理士・精神保健福祉士)が選任されています。

 

これは家族が成年後見人となった場合、

  • 制度を悪用して親の財産を使い込む
  • 孫への贈与などこれまでの慣例になっている贈与を、「するのが当たり前だ」と続けてしまう

といったリスクが高くなってしまうからです。

 

 

成年後見人の業務は?

あなた自身が成年後見人に立候補するかどうかを考えるにあたって

  • 成年後見人はどのような役割があるのか
  • 成年後見人になったらどのような業務があるのか

が気になるでしょう。

 

成年後見人の役割

成年後見人は、

  • 被成年後見人が悪徳な訪問販売などに騙されたときにその契約を取り消す
  • 財産が減らないよう被成年後見人の財産を保護する
  • 本人の意思を尊重しつつ心身の状態・生活状況を配慮して介護施設との契約などを行う

というような、本人の財産を保護し、被成年後見人の生活や医療、介護に関するサポートの役割(身上監護)を持ちます。

 

成年後見制度における身上監護は被成年後見人の生活や医療、介護に関するサポートのことを指します。

これは「成年後見人が被成年後見人の介護をしろ」というものではなく、介護が必要な場合に介護施設への入居や訪問介護の手続きを行うなどの契約行為・手続きについての責任を負うということです。

また、この財産管理状況を定期的に家庭裁判所に報告する義務も負います。

財産管理が出来るから、成年後見人になって相続対策をしよう

ということを考えても、最後まで裁判所にばれずに行うことはほぼ出来ないと考えた方がいいでしょう。

 

 

成年後見人の業務

成年後見人は本人の生活などを守る身上監護の業務と、本人の財産を管理する業務を行います。

身上監護での業務

  • 被成年後見人が一定水準の生活ができるよう在宅介護などの契約締結やその費用の支払い
  • 被成年後見人の住居の契約締結やその費用の支払い
  • 被成年後見人が受診・致傷・入院が必要になった場合、契約締結や費用を支払う
  • 介護施設などに入居する場合情報収集や本人の意思確認、契約締結やその費用の支払い

 

財産管理の業務

  • 銀行などの金融機関との取引
  • 不動産など財産の管理・保存・処分
  • 年金や不動産などからの収入、税金や家賃、医療費などの出費の管理
  • 保険の加入や保険金受け取り
  • 預金通帳などの保管
  • 遺産分割協議の参加など

 

身上監護の業務は、住居や病院への受診等でかかる費用を被成年後見人の財産から支払ったり、必要な場合に在宅介護などのサービスの契約をして被成年後見人の生活を守ります。

また必要に応じて定期預金を解約したり、不動産の管理をします。

被成年後見人と成年後見人に利益相反がなければ、遺産分割協議の際には被成年後見人の代理として遺産分割協議に参加します。

 

 

これは成年後見人はやっていいの?

成年後見人は、全てにおいて被成年後見人の代理行為が出来るように感じてしまいます。

しかし成年後見人でも、被成年後見人の生活を自分の思い通りにできるわけではありませんし、財産を好き勝手にすることも出来ません。

成年後見人が出来ないものとしては

  • 被成年後見人購入した日用品の取消
  • 被成年後見人のため以外の財産の使用
  • 遺産分割協議で法定相続分以外の主張
  • 手術などの医療行為に対する合意
  • 身元保証人や身元引受人などの保証人になること
  • 被成年後見人がどこに住むのかの指定

というものが挙げられます。

 

成年後見人は被成年後見人が悪徳商法に引っかかった場合は、その取引を無効に出来ます。

しかし、被成年後見人がコンビニで買った日用品などに関しては、無効にすることは出来ません。

また財産管理は本人の利益を守る運用をしなければならないので、

親(被成年後見人)の送り迎えをするのは自分だし、親の財産でBMWを買って自分のものにしてしまおう
子供が私立学校に入学することになって自分たちのお金が足りなくなるから、親の財産から立て替えさせてもらおう

ということは出来ません。

利益さえ守れば投資などの動的な財産管理をしていいのかというとそうでもなく、財産の保護・維持を目的とした静的な管理しか出来ません。

不動産の管理において、被成年後見人が居住している実家を売却する為には家庭裁判所からの許可をもらう必要があります。

 

また身上監護は「本人の意思を尊重」しなければならないので、

親を実家で生活させていると私の移動が面倒だから、私の家の近くに引越しさせよう

という自分本位なことは出来ません。

注意しなければならないのは、医師から手術などの医療行為に対する同意も成年後見人は出来ないことです。

そして成年後見人は代理であり、被成年後見人の保証人になることも出来ません。

 

 

成年後見制度を使ってやりたいことは終わったけど、止めていい?

認知症である親の定期預金を解約したくて銀行に行ったら、『成年後見制度を利用する必要がある』と言われた

ということで成年後見制度を申し立てた場合、定期預金を解約すればもう成年後見人に用はないと感じるでしょう。

成年後見人がいる間は報酬を支払い続けなければなりませんし、あなたが成年後見人である場合は定期的に家庭裁判所や後見監督人に報告する義務があります。

このような負担は短い方がいいと思うでしょうが、原則として被成年後見人本人が亡くなるか、意思能力が回復するまで続きます。

このことを考慮せずに成年後見制度を利用してしまうと、後悔することになるでしょう。

 

 

被成年後見人になったら、親の生活に制限はあるの?

補助の審判であれば特に制限はないのですが、後見開始の審判を受けてしまうと印鑑証明が出来なくなります。

また被成年後見人になると医師や税理士などの国家資格、公務員や会社役員の地位がなくなってしまいます。

選挙権に関しては2013年以前は失っていましたが、現在は選挙に参加することが出来ます。

 

 

被成年後見人になったら、戸籍か何かに表記されてしまう?

本人の戸籍に被成年後見人であることは記載されません。

被成年後見人であることの記載は、後見登記等ファイルに記載されます。

後見登記等ファイルは東京法務局が管理しており、被成年後見人になった場合などにそのことが記載されます。

この後見登記等ファイルは「被成年後見人であることの証明」以外にも、後見登記等ファイルに登記されていない、つまり「被成年後見人でないことの証明」などにも利用します。

 

 

まとめ

あなたやあなたの親が認知症などで判断能力がなくなってしまったときに、成年後見制度は本人とその財産を守る為の頼もしい制度です。

しかし準備運動をせずにいきなり運動をするときのように、突然「成年後見制度が必要だ!」と家庭裁判所に申し立ててしまうと、その財産を保護する為の制度が邪魔になってしまうことが多くあります。

事前に任意後見制度を含めた認知症対策をしなければ、資産運用や相続対策のための財産管理はほぼ出来なくなるでしょう。

判断能力がなくなってしまえば遺言なども書くことは出来なくなってしまうので、そこにつけこまれてしまう事例も少なくありません。

 

逆に元気な内に認知症対策や相続対策をしていれば、成年後見制度は非常に頼もしい制度となるのです。

相続サロン多摩相談インターでは、日本相続コンサルティング協会の公認相続コンサルタントであり、家族信託普及協会の家族信託コーディネーターでもある相続全般の専門家が在籍しているので、最近話題の家族信託を含めた相続対策を行うことが出来ます。

相続について何か不安なことがあれば、是非ご相談ください。

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