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家族信託で受益者代理人を選任することの心強さと危険性

 2017/06/24 家族信託 家族信託とは
この記事は約 9 分で読めます。

最近NHKなどのメディアでとりあげられたこともあり、家族信託の認知度は高まってきています。

信託というと信託銀行などが行う営利目的で不特定多数に行う商事信託を想像する方は多いですが、それ以外にも信頼できる身近な人物に自分の財産を信じて託す民事信託があります。

家族信託は民事信託の内、家族のために家族で行う信託を指します。

民事信託は基本的に財産を託す人、財産を託される人、託される財産の恩恵を受ける人、託される財産で構成されますが、それ以外に信託が適切に行われるよう監視する役割などを持つ人物を設定することが出来ます。

その一つが受益者代理人です。

 

受益者代理人はその名の通り受益者の代理権を持つ人物で、受益者代理人が設定されていれば認知症や障害などで判断能力がなくなってしまった人物を受益者に設定しても受益者としての権利を代理人が行使してくれます。

その為高齢の委託者が当初受益者である場合に、認知症になって判断能力がなくなってしまった後のことを考慮して受益者代理人を設定することもあります。

 

しかし受益者代理人を設定するときに注意していただきたいのが、受益者代理人の権利が強力なことです。

受益者代理人は受益者がまだ判断能力が残っている状態でも有効で、受益者は一部の権限を除き行使できなくなるのです。

受益者代理人を設定してしまった為に、元気な内でさえもほとんど何も出来なくなってしまうという危険性を考えると、「自分が今後どうなるか分からないし弁護士さんが選任したほうがいいって言ってたから受益者代理人を設定しよう」というような言われるがまま決めてしまうのではなく、受益者代理人とはどんな制度かを理解した上で設定した方がいいでしょう。

 

 

家族信託とは

委託者:信頼する人を受託者として、自分の財産を信託財産として託す人

受託者:委託者から信託財産を託される人

受益者:信託財産から利益を受け、財産についての税金などを支払う人

信託財産:委託者が受託者に信託する財産で、名義は委託者から受託者に変わる

 

家族信託の基本構造は委託者、受託者、受益者、信託財産からなります。

信託財産の名義は受託者に移るので、例え委託者が認知症などで判断能力がなくなってしまっても変わらず信託財産を信託契約に沿って管理運用が出来ます。

また信託財産は委託者が亡くなったときに相続財産に含まれないので、遺産分割協議をしなくても受託者は管理を続けられます。

委託者が亡くなった後など契約終了のタイミングで残った財産が誰のものになるかも設定できますし、次の受託者を設定しておき委託者が亡くなってからも信託契約を続けることも出来ます。

 

この認知症対策、相続対策になり遺言と同じような機能を持っているため、家族信託は注目されるようになりました。

受益者の設定も柔軟に可能で、2人の子供を受益者として設定したり「自分の次は子供、子供の次は孫」というような何代先の分も設定することが出来ます。

基本的に家族信託は「信頼できる人(受託者)に財産を託す」制度ですので、契約後は受託者を信じて引用してもらうことになります。

しかし受益者を複数にするなど関わる人数が増えて不安、未成年や障害を持つ子供など受益者としての権利を行使できない場合に受益者代理人などの基本構造には登場しない役割を組み込みことがあります。

 

 

受益者代理人とは

受益者代理人は改正された信託法で登場した役割で、受益者の代理権を持つ人物です。

一部を除いた受益者の権利に関する裁判上、裁判外の行為に対する権限を持っています。

受益者が3人設定されているような受益者が複数存在している状態では、受益者としての権利行使に時間がかかってしまうことがあります。

また認知症などで判断能力がなくなってしまった受益権を行使することが出来ない人が受益者となっている場合に、その人の代わりに受益権を行使することが出来ます。

この受益者代理人は必ず設定しなければならないものではなく、信託で設定した場合に限って選任することが出来ます。

 

 

受益者代理人の義務

受益者代理人は自分に代理権があるからと自分の思い通りに代理権を行使できるかというと、そうではありません。

信託法で受益者代理人は善良な管理者として注意し権限を行使しなければならず、代理する受益者のために公平誠実な代理権行使をしなければならないというように義務付けられているので、自分本位な代理権行使は出来ないのです。

 

 

受益者代理人のメリット

受益者代理人を設定するとメリットがあるのは

  • 受益者が複数いる中で、例えば複数いる受益者の中に受託者と非常に仲の悪い受益者がいる場合など円滑な信託を進めることが難しい場合
  • 最初から意思能力のない人物を受益者に設定した場合

というような状況でしょう。

 

受益者は受益権を行使できますが、受益者が複数人いる場合は主張の違いなどでトラブルが起きる可能性があります。

特に元々相続争いが起きることを予想して家族信託で争族対策をしていた場合、受益者同士の仲が悪くそれぞれが好きなように主張しいがみ合ってしまう可能性があります。

基本的に信託財産の運用自体は受託者が信託契約に沿って行うことが出来ますが、受益者が受託者の行動に対して嫌がらせ目的で異議申し立てをしてくるなど受益者が受託者を監視する権限を悪用する危険性もあります。

 

元々受益者代理人はこのようなケースを想定して設定されており、公平な視点で受託者を監視してくれる人物を受益者代理人に設定することで、円滑な信託運用が出来るようになるのです。

他にも委託者の死後も障害を持つ子供などを守る信託や、元々認知症で判断能力がなくなっている配偶者を受益者となる場合に有効になります。

 

 

受益者代理人のデメリット

受益者代理人を設定した場合、受益者は法律で「この権利は信託行為で制限されません」となっている異議申立て権や請求権など最低限の権利しかありません。

その為受益者代理人を設定した段階で、受益者の権限は大きく制限されてしまうのです。

もしも「元気である内は受益者としての権利を行使しよう」と考えていたとしても、受益者代理人が選任された段階でその権利のほとんどは失われます。

この点をよく考えた上で受益者代理人を設定するかどうかを考えた方がいいでしょう。

 

 

その他設定できる役割

受益者代理人以外にも、信託の基本的な構成である委託者、受託者、受益者以外に設定できるものがあります。

 

 

信託監督人

信託監督人は信託行為で選任する以外にも、利害関係者が裁判所に申し立てることで裁判所が選任します。

受益者が認知症であったり、障害を持つ子供になるなどの場合、受益者を受託者が監視する機能はなくなってしまいます。

そのような場合に受託者が契約に沿って行動しているかを監視する役割を持つのが、信託監督人です。

信頼できる人物だけど誰かから強く言われてしまうと流されてしまうことがある人が受託者である場合に、周りに流されないよう監督する人を定めたい場合に信託契約で設定できます。

また、信託契約を進めているうちに受託者が勝手な行動をとるようになって北場合などに裁判所に申し立てた場合に選任されます。

 

 

受益者指定権者

例えば

  • 「現状誰に財産を渡すか考えていないけど、自分の判断能力があるうちに信託契約を行いたい」というようなまだ受益者を決めていない場合
  • 「とりあえず受託者兼第二受益者として長男に信託財産を任せるけど、今後の家族関係によっては次男を受益者にしたい」という今後の状況次第で受益者を変えられるようにしたい場合

という場合には、信託契約で受益者を決めるだけでは要望に応えられません。

 

そのような場合に設定されるのが、受益者指定権者です。

受益者指定権者はその名の通り受益者を指定する権利を持つ人物です。

次に受益者となる人物がその後受益者としてふさわしくないと判断した場合や、そもそも次の受益者を定めていないときに、受益者指定権者を設定しておけばその時点でふさわしいと判断した人物を受益者とすることが出来るのです。

 

指図権者

家族信託をした後は、信託財産の名義は受託者に移り信託契約に沿って受託者が管理運用処分をします。

このときに受託者の行為に指図をすることが出来るようにするのが、指図権者です。

委託者の判断能力がなくなった後の対策として、管理運用が必要な父の財産を子供に信託財産として託す家族信託を検討する方も多いのですが、家族信託締結時に委託者はまだ判断能力があります。

その為「いつかは託したいけど、今はまだ自分が運用をしていたい…」という想いが強い方は多いです。

 

「自分がまだ運用したい!」という想いが強いと、家族信託という子供に運用を任せる契約に反発し、気がつけば判断能力がなくなり信託をすることが出来なくなり財産が凍結されてしまうというケースも少なくないでしょう。

そのようなときに指図権者を設定すると、「それならやってもいいかな」となる方もいらっしゃると思います。

信託契約の内容に沿わない指図は出来ませんが、指図権者は受託者の管理運用に対して口を挟むことが出来ます。

 

「自分が全部出来た方が良い」「任されたのに自分の思い通りに出来ないなんて…」という意見もあるかもしれませんが、この指図権で父がこれまでどのように管理してきたかを引き継ぐことが出来ますし、相続で突然管理を任されてしまう状態よりも管理運用のハードルを下げることが出来ます。

相続と違い財産以外のノウハウも引き継ぐことが出来るように出来ると考えると、指図権を設定することは悪いことではないのではないでしょうか?

 

 

受益者代理人や信託監督人、受益者指定権者、指図権者は受託者や受益者に対して大きな影響力を持ちます。

その為信託の中に設定をする場合にも、受益者代理人などがどのような役割を持つのか十分に理解し、誰になら任せられるかをしっかりと考えた方がいいのです。

とはいえ自分で必要か否かを判断するのは難しいですし、家族信託自体最近になって注目され始めた制度です。

その為司法書士や弁護士のような法律の専門家であっても信託銀行などの商事信託と混同して考えてしまっていたり、名前を聞いたことがあるという程度で「依頼を受けてから調べてみよう」というスタンスの方も少なくないのです。

相続サロン多摩相談センターには、家族信託普及協会の家族信託コーディネーターが在籍しており家族信託について深い知識を持っています。

家族信託について興味があれば、お気軽にご相談ください。

相続サロン多摩相談センターへの相談はこちらからどうぞ

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