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信託銀行では相談できない家族信託(民事信託)

 2017/06/08 家族信託 家族信託とは
この記事は約 9 分で読めます。

近年メディアで紹介されることが増えた家族信託ですが、信託銀行では相談することは出来ません。

信託銀行の中には「家族信託」という名称の商品がありますが、これはメディアの紹介する家族信託とは異なるものです。

信託というと、信託銀行や投資信託、株式信託などを相続する方は多いでしょう。

このような信託銀行などが行う、不特定多数に対して営利目的で行う信託を商事信託といいます。

信託銀行の商品として存在する「家族信託」も、この商事信託の商品です。

 

テレビなどのメディアで紹介されている家族信託は、民事信託で行われる家族信託を指しています。

民事信託は商事信託と違い家族や親戚など身近な信頼できる人物に対して、自分の財産を信託財産として託すものです。

商事信託で信託財産として信託できるのは現金や賃貸マンションなどの収益不動産、株式などに限られてしまいますが、民事信託ではペットや自宅など商事信託では信託財産に出来ないようなものも信託財産とすることが出来ます。

法律用語ではありませんがこの民事信託の内、家族で行うものを家族信託と呼んでいるのです。

 

信託において「財産を託される人」を受託者と呼び、信託銀行で提供する商品は信託銀行を受託者とした商事信託であり、民事信託である家族信託は相談することは出来ません。

他にも信託銀行に相談するイメージの強いものとして「遺言信託」というものがあるでしょう。

信託銀行の遺言信託は、信託銀行が遺言書作成のコンサルティングを行い作成した遺言書を銀行で保管、契約した本人が亡くなった後に遺言の執行を行うというものです。

この商品は信託という名称がつけられていますが、実は信託ではありません。

 

本来の用語としての遺言信託は遺言の中で信託契約について記載し、どの財産を誰に信託しどう管理運用処分するか等を遺言で設定することをいいます。

しかし「信託といえば信託銀行」というイメージが強い為に、「家族信託・遺言信託は信託銀行で相談するもの」という先入観をもっていらっしゃる方が少なくありません。

そこで今回は家族信託がどのようなものか、信託銀行のものとどう異なるのか、信託銀行の遺言信託はどのようなものかについて紹介します。

 

 

家族信託とは

メディア等で最近注目されている家族信託は、信頼できる家族に自分の財産を信じて託す民事信託です。

家族信託の基本構造としては

委託者:自分の財産を信託財産として、信頼できる人物を受託者として信託する人

受託者:委託者から信託財産を信託されて、契約に沿った管理運用をする人

受益者:信託財産からの利益を受ける人、複数人・何代でも設定可能

信託財産:委託者から受託者に信託される財産で、名義は受託者に、利益は受益者のものとなる。委託者=受益者の場合は贈与税がかからない

 

家族信託のポイントとしては

  • 信託財産の所有権が名義と受益権になり受託者は名義、受益者は受益権を得る
  • 受益者が委託者であれば贈与とならない
  • 受益権の承継先を複数、何代までも自由に設定できる
  • 受益権を分割しても受託者が契約内容に沿って管理運用できる

 

信託財産の所有権が名義と受益権になり受託者は名義、受益者は受益権を得る

普通であれば利益を得る人物と管理運用をする人物は同一人物となるのですが、信託財産はこの二つを名義と受益権に分割します。

そして受益者は受益権という「信託財産から得られる利益」を持ち、信託財産の名義が受託者になることで受託者は「信託財産を信託契約に沿って管理運用する権限」を持ちます。

その為賃貸マンションを信託財産とした場合その賃料などの利益は受益者が得て、管理運用処分は信託契約に沿って受託者が行います。

 

名義が受託者になることに抵抗を感じる方も多いのですが、受託者の名義となることで委託者が認知症などで判断能力が無くなっても変わらず管理運用を続けられるのです。

もしも信託をせずに代理として管理運用をしているだけだと、所有者が認知症になり判断能力が亡くなった段階で新しい賃貸借契約やリフォーム、売買等の本人の意思確認が必要な契約は原則できなくなってしまうのです。

 

 

受益者が委託者であれば贈与とならない

委託者が最初の受益者である場合、元々所有していた人物と財産から利益を受ける人物が同じであるので、贈与税はかかりません。

その為父の賃貸マンションを信託財産として子供が受託者、委託者兼当初受益者を父とした場合、贈与税がかからずに子供に管理運用を任せることが出来るのです。

このときに父に指図権を設定しておけば、父は変わらず管理運用に関与することも出来ます。

 

当初受益者が委託者と違う、例えば父の金銭を信託財産として母を受託者、子供を受益者とした場合はみなし贈与として贈与税が課税されます。

みなし贈与は民法上の贈与(受け取る人の「受け取ります」、渡す人の「あげます」という双方の意思表示が必要)の条件を満たしていなくても、実質的に贈与となっているときに課税されます。

子供の名義預金で「子供に知らせない・預金を引き出せない」場合には贈与とみなされず名称が子供なだけの親の預金という扱いになるので注意が必要です。

判例がまだないので確実とはいえないのですが信託時には委託者と受託者の署名は必要ですが受益者が署名をすることはないので、子供を受益者とした家族信託で信託財産を現金にすればみなし贈与として名義預金とみなされないように出来ると考えられます。

 

 

受益権の承継先を複数、何代までも自由に設定できる

通常遺言では自分亡き後の財産の行き先は指定できますが、その次の相続先を指定することは出来ません。

しかし家族信託であれば、当初受益者は父、第二受益者を子供二人、第三受益者を孫というように何代にもわたる相続先の指定が出来るのです。

信託契約後30年経過した後次の承継がなされたらそれ以降承継しないという30年ルールがあるので玄孫(やしゃご)以降などあまり先まで指定してもそこまで続きませんが、「子供の嫁の家系に財産が流れてしまうのはいやだ…」という場合には有効な方法になります。

また、受益権は分割して承継させることも出来るので、賃貸マンションの受益権を2人の子供に承継させて、賃料収入を2人の子供が得られるようにすることも出来ます。

 

その場合でも受託者は1人なので、共有財産とならずに受託者の意思で契約に沿って管理運用をすることが出来ます。

もしも信託をせずに2人の子供に賃料収入を分けようと所有権を分けた共有財産とした場合、所有権を持つもの全員の合意がなければ売買やリフォーム等が出来なくなります。

相続後に子供同士が疎遠になってしまったときも不便になりますが、子供の相続で更に所有権が分割された結果最終的に数十人の共有財産となってしまったケースもあります。

その場合数十人の合意がなければ売買もリフォームも出来なくなってしまうので注意しましょう。

 

 

このようなポイントを上手く活用することで擬似的な隠居や家督相続を再現したり、同性カップルのパートナーが亡くなったときの財産対策など様々な状況に柔軟に対応できる相続対策として活用することが出来ます。

 

 

 

信託銀行の家族信託

信託銀行での家族信託はみずほ信託銀行の商品名です。

内容に関しては他の信託銀行が行う遺言代用信託と似たようなものとなっています。

信託銀行の遺言代用信託は契約者を委託者兼当初受益者、信託銀行を受託者、指定した受取人を受益者とした商事信託です。

 

信託金を運用で得られる利益や利息などから信託銀行への報酬を差し引いた額は、追加信託されるか配当金となります。

運用利益から報酬を差し引いているので、大体の場合は最初の契約時に支払う費用以外の費用は発生しないようになっていることが多いようです。

民事信託と異なりほとんどの場合金銭しか信託財産とすることは出来ませんが、資産が現金だけで「残念だけど子供に財産を任せようと思えない…」というような、民事信託では受託者がいないような場合には選択肢に入るでしょう。

 

 

信託銀行の遺言信託

信託銀行の遺言信託は、信託の基本である委託者、受託者、受益者などが登場しない民法上信託となっていない商品です。

この商品は遺言書作成のコンサルティングを行うことから始まります。

ほとんどの場合作成する遺言書は公正証書遺言で、遺言書を作成した後その遺言書の正本は信託銀行が管理します。

そして遺言者(遺言を書いた人)が亡くなった後信託銀行は遺言執行者となるというものです。

このとき争族に発展しているなどで遺言執行が難しい場合などは遺言執行を辞退するケースがあること、遺言執行の報酬は弁護士に依頼をする場合と大差ないため、争う危険性がある場合には遺言執行者としての部分は行うことが出来ない危険性があります。

 

また遺言書を保管することに関してですが、銀行が保管する上でのメリットは紛失の恐れがない、改ざんの心配がないということがあるでしょう。

元々公正証書遺言の場合公証役場に原本が保管されますので、紛失しても再交付してもらえ、改ざんのリスクもありません。

信託銀行の遺言信託では契約時に相続開始通知者という遺言者が亡くなったことを通知する人物を設定しますので、通知者に設定できるほど信頼できる人物に公正証書遺言を書いた旨を伝えておけば遺言書があることを気付けなかったということもないでしょう。

もしも「相続になったときに争うことになりそう…」という場合で遺言執行者を指定したい場合には、信託銀行の遺言信託を選択するよりも最初から弁護士に依頼することを考えた方がいいでしょう。

 

 

相続サロン多摩相談センターでは相続に造詣の深い弁護士とも連携をしているので、争ってしまう可能性がある場合でもお力になることが出来ます。

また弁護士や司法書士などの法律の専門家であっても、商事信託と民事信託を混乱して覚えている場合が少なくありません。

信託銀行などが受託者となる商事信託の場合は、受託者が悪さをしないように契約内容に受託者を縛るものが多くなっていたり、家族信託では不必要となる条文が多くあります。

 

しかし商事信託と民事信託を混合してしまっている専門家に家族信託の設計を依頼してしまうと商事信託に近い、不必要な条文が多かったり受託者が毎月報告書を書かなければならなくなっていたりと後々のトラブルの原因となってしまうケースもあるのです。

相続サロン多摩相談センターでは家族信託普及協会の家族信託コーディネーターが在籍しているので、あなたに適切な家族信託の提案をすることが出来ます。

家族信託について相談がある場合には、是非ご相談ください。

相続サロン多摩相談センターへの相談はこちらからどうぞ

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