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相続税対策で不動産を生前贈与してもらえないときに提案してみる家族信託

 2017/05/30 家族信託
この記事は約 11 分で読めます。

「まだまだ若いモンには負けん!」と張り切る父を頼もしく感じつつも、「相続はどうなるんだろう…」という不安を感じてしまっていませんか?

当サイトで紹介している隠居信託や、よくある「株の評価額を下げて生前贈与する」という方法は、相続対策として有効な手段です。

しかし隠居信託は受益権が継承される際に相続税が発生してしまうので、相続対策としては優秀ですが相続税額に関しては対策とはなりません。

 

また株の評価額を下げてからの生前贈与の場合、評価額を下げた状態で贈与してしまうので相続税対策としてポピュラーな方法ですが、財産が子供のものとなってしまうことに「まだ早いんじゃないか…」「俺がまだ引っ張っていきたいんだ!」という想いがあると踏み切れないものです。

父としては、相続税を節税する為の方法としては優秀であってもそれで自分が何も出来なくなってしまえば生きがいがなくなってしまいます。

さらに贈与した後、「子供が運営をして、運用に失敗してしまったらどうしよう…」とあなたの心配もするでしょう。

そこで今回は家族信託と生前贈与を活用した、相続税の節税をしつつまだまだ元気な父に頑張ってもらおうという方法を紹介します。

 

この方法は

  • 相続税の節税の重要性は理解しているが、まだまだ現役を続けたい!
  • いずれ事業承継をしたいとは考えているが、まだ子供には経験を積んでほしい

という場合に向いています。

逆に

  • 早めに事業承継をしたいけど、現状では贈与税を支払うことが出来ない
  • 贈与税を支払うことが出来ないから自分の財産のままだけど、最近物忘れが激しくなってきて財産の凍結が心配…

という場合には隠居信託の方が向いているので、こちらをどうぞ。

贈与税は怖くない!家族信託で隠居を実現できるのを知っていますか?

 

 

家族信託とは

信託はテレビCMでよく観るような信託銀行などが行う不特定多数を対象とした営利目的の商事信託と違い、家族などの身近な特定少数に、非営利目的で行う民事信託があり、家族信託は家族のために行う民事信託のことをいいます。

委託者:自分の財産を信託財産として、信頼できる人物を受託者として信託する人

受託者:委託者から信託財産を信託されて、契約に沿った管理運用をする人

受益者:信託財産からの利益を受ける人、複数人・何代でも設定可能

信託財産:委託者から受託者に信託される財産で、名義は受託者に、利益は受益者のものとなる。委託者=受益者の場合は贈与税がかからない

 

名義が受託者になるので委託者が認知症になっても信託契約に沿って受託者が問題なく管理運用でき、第二受益者を定めておけば受益者が亡くなっても共有財産にはなりません。

その為成年後見制度や遺言制度の機能を持った幅広い状況に対応できる制度として、近年注目されています。

 

 

生前贈与で行われる相続税対策

贈与税は元々相続発生前に財産を全て贈与するなどで相続税を逃れようとした場合の措置と言われています。

贈与額が高くなればなるほど高くなる累進税率を採用しており、最高税率は日本で一番高い税率となっています。

しかし

  • 制度や特例などの活用
  • 贈与するタイミングを見定める

というポイントをおさえることで、相続税の節税になるのです。

 

 

制度や特例などの活用

もしも「まだ時間がある」と思えば、毎年110万円までの暦年贈与は非課税となっていますので、この暦年贈与枠で毎年贈与をするということも有効です。

しかし細分化して贈与が出来なかったり、「いつ贈与が出来ない状態になってしまうだろう…」という不安があるのであれば、相続時清算課税制度を活用するといいでしょう。

相続時清算課税制度は暦年贈与との選択式の制度であり、一度相続時清算課税制度を選択したらその人からの贈与は全て相続時清算課税制度での贈与となり、暦年贈与に戻すことは出来なくなります。

相続時精算課税制度では贈与者から2,500万円までの生前贈与に関しては非課税とし、それ以上の贈与額には一律20%となります。

 

相続時清算課税という名称の通り、贈与をした人が亡くなった後に贈与された財産を相続財産に含めて相続税の計算をします。

贈与の段階で非課税枠を超えて贈与した結果相続税を納税していた場合相続税で清算されるので、相続税と贈与税の二重課税にはなりません。

相続時清算課税には2,500万円までの非課税枠、相続時に相続税を課税することの他にもポイントがあります。

それは、相続税が課税される際に「贈与したときの評価額で課税される」という点です。

 

その為景気が最高潮で株価も高騰してしまっている株式や、建て直したばかりで評価額が高い状態の賃貸マンションを贈与してしまうと、例え「相続時には株価が下がって危機的状況にある」「建て直してから年月が経過し評価額が激減している賃貸マンション」というような贈与時よりも価値が下がっている状態であっても、贈与したときの価値が高い価格で相続税を計算しなくてはならなくなります。

その為、贈与をするタイミングが重要になるのです。

 

 

評価額が低い状態で贈与をする

賃貸マンションなどの不動産であれば、修繕する前の状態などの評価額が低い状態で相続時清算課税制度を利用して贈与をすることで、その後建て直しやリフォーム等で評価額が贈与時より上がった状態で相続が発生しても贈与時の評価額で相続税の計算を行うことができます。

会社の持ち株であれば、含み損のある資産を売却することで損金を出すなどの方法で、株の評価額を下げることが出来ます。

 

この下げたタイミングで贈与をすることで、その後業績が上がって株価が値上がりしたとしても、贈与の時点での評価額で相続税を計算することが出来ます。

また贈与した段階で子供の財産になりますから、賃料などの財産から出てくる利益で、相続税の納税資金の対策とすることが出来ます。

節税面だけでなく、この納税資金の確保も生前贈与のメリットとなります。

 

 

生前贈与をしてからの家族信託

生前贈与は優秀な相続対策となりますが、これでは「まだ仕事を生きがいとしていたい!」「まだ子供に任せるのは不安!」というような想いがある場合には利用しにくいですよね。

このようなときの一つの対策として有効なのが、「生前贈与をした後に家族信託をする」ことです。

信託財産の管理運用は信託契約に沿って受託者が行い、委託者と当初受益者が同一であれば贈与税は課税されません。

つまり評価額が高くない適切なタイミングで父から子供への生前贈与を行い、そのタイミングで委託者兼当初受益者が子供、受託者が父で家族信託を結ぶのです。

このことによって、節税対策としての生前贈与を行った上で管理運用は父が行うことが出来るようになるのです。

 

父が認知症などで判断能力が亡くなってしまったときに備えてあらかじめ指定した人物との合意により信託契約を終了できるようにしてもいいですし、成年後見制度を利用すれば受託者の終了事由となり信託契約が終了します。

また受託者として自分が管理運用していても、「受益権を渡した状態で誰かにそそのかされて自分に対して対応がかわるのでは?」「先に子供が亡くなってしまったら子供の嫁の家系に財産が行ってしまう、それの管理を自分がするなんて嫌だ!」という場合には、妻を受益者指定権者として設定したり、受益者連続信託とすればいいでしょう。

受益者指定権はその名の通り「受益者を指定する権利」です。

 

この権利を有している人物は意思表示などでその権利を行使することが出来ます。

この受益者指定権者を父や母に設定しておけば、財産を贈与してから人が変わったように素行が悪くなってしまったときなどに、その受益権を別の人物に変更することが出来るようになるのです。

とはいえ受益権が別の人物に承継される以上贈与税は課税されてしまうので、受益者指定権者を指定していてもその権利の行使は慎重に行いましょう。

また孫がいない状態で子供が先に亡くなってしまうと、その財産は配偶者である子供の妻が2/3、直系尊属である父と母が1/3の割合で相続します。

 

このときに子供の妻に相続された財産はそのまま妻の家系に流れてしまうことになります。

自分たちの家系の財産でなくなったものの管理運用をしなければいけないと考えると、あまり気持ちのいいものではないでしょう。

そのような時は当初受益者である子供の次に、子供の嫁の他に父や母、娘などを第二受益者として設定すればいいのです。

こうすることでもしも父より先に子供が亡くなってしまったとき、受益権は第二受益者に移り子供の嫁の家系には財産は流れにくくなります。

このときに子供の嫁に遺留分相当の受益権を承継させずに自分の家系に承継させてしまうと、子供の嫁の遺留分を侵害してしまい遺留分減殺請求をしてくるリスクがあるので注意しましょう。

第三受益者として娘の子供、つまり孫を設定しておけば、子供の嫁が亡くなった後に財産は父の家系に戻ってきます。

 

 

生前贈与後の家族信託の例

  • 登場人物

父:自分が亡くなったときの相続税のことは心配しているが、自分の賃貸マンションの管理は続けたいと考えている

母:長男の嫁と仲が悪く、長男に財産を贈与すると人の良い長男は嫁にそそのかされてしまうのではと不安に思っている

長男:妻はいるが子供はいない

長男の嫁:以後「嫁」

次男:妻子がいる

次男の子供:以後「子供」

父の財産:賃貸マンション・現金

 

 

第一段階:生前贈与

父の所有する賃貸マンションと敷金相当額の現金を、リフォームや建て直しをする前に長男に相続時清算課税制度を利用して贈与する。

本来債務は信託できないのですが、このとき敷金相当額の現金も一緒に贈与しなければ敷金という債務まで贈与されることになります。

そうなると「これをあげるから、かわりにこれお願いね」という負担付贈与の扱いになります。

通常不動産を贈与したときの課税対象額は相続税と同様建物は固定資産税評価額相当、土地は路線価(設定されていなければ倍率方式)となるのですが、負担付贈与の場合時価で評価しなければならず贈与税が高額になってしまうのです。

贈与を受けた後にリフォーム・リノベーションなどを行って評価額が高くなっても、贈与したときの評価額で相続税を計算することが出来ます。

 

 

第二段階:家族信託

  • 信託構成

委託者兼当初受益者:長男

受託者:父

予備受託者兼第二受益者(2/3):次男

第二受益者(1/3):嫁

第三受益者:子供

受益者指定権者:母

信託財産:賃貸マンション・現金の一部

 

 

このような信託構成にすることで評価額が下がっているうちに生前贈与をし、なおかつ引き続き父が賃貸マンションの管理運用を行うことが出来ます。

更に利益は受益権を持つ長男のものとなるので、相続税の納税資金の確保が出来るようになります。

信託報酬は設定しなくても問題は無いのですが、設定しておけば父と母の生活が苦しくなることは無いでしょう。

長男亡き後も受益権は最終的に父の直系に承継されるようになり、嫁も遺留分相当の受益権は承継しているので遺留分減殺請求はされないと考えられます。

とはいえ信託での遺留分に関しては判例がまだないので、「こうなります」と断言できず様々な意見がありますので注意が必要です。

このときに「嫁に承継させてもいい」となっていれば、母の受益者指定権で嫁に全ての受益権が承継されるようにすればいいでしょう。

 

 

まとめ

このように家族信託は様々なニーズに合わせて契約内容を作ることの出来る、柔軟な制度です。

しかし柔軟であることで、適切な信託契約を作り出すことが難解になってしまっています。

例えば今回のような受託者が高齢である場合、信託内容が長く続いていても先に受託者が亡くなってしまうかもしれません。

そのときに予備受託者を設定していないとその場になって探すことになるのですが、受託者を定められないまま1年が経過してしまうと信託は終了してしまいます。

 

また民事信託は普及し始めたばかりであり、司法書士や弁護士のような法律の専門家であっても民事信託を正確に理解できておらず商事信託とごちゃ混ぜになってしまっている専門家は少なくありません。

構成に問題のある信託や、商事信託と混ざってしまい受託者の権限を強く縛ってしまうような信託では後々のトラブルの原因となってしまうことも多いのです。

 

相続サロン多摩相談センターには家族信託普及協会の家族信託コーディネーターが在籍しており、適切な信託契約を提案することが出来ます。

また日本相続コンサルティング協会の公認相続コンサルタントであり宅地建物取引士の資格も持つ相続と不動産の専門家でもありますので、家族信託だけでなく他の制度も活用した相続対策を提案することが出来ます。

相続についてお悩みのことがあれば、是非ご相談ください。

相続サロン多摩相談センターへの相談はこちらからどうぞ

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