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家族信託を自分でやりたい人に送る「失敗例」

 2017/05/19 家族信託 家族信託とは 家族信託の手続き
この記事は約 13 分で読めます。

家族信託は最近メディアで特集を組まれることも増えてきて、相続対策セミナーなどにもよく出てくるようになったことで認知度が上がってきました。

しかし司法書士や弁護士などの法律の専門家の中には家族信託(民事信託)と商事信託が混ざってしまっているなど、家族信託についてあまり理解していない方々も多く見受けられます。

家族信託普及協会で家族信託についての専門知識を学んだ家族信託コーディネーターのような、家族信託についてしっかり知識を蓄えた専門家に家族信託の設計をしてもらった方が良いでしょう。

 

この家族信託は委任契約成年後見制度遺言の機能を含んだ柔軟性の高い制度で、様々な状況で使うことが出来ます。

しかし定まった書式が存在せず、どのような家族信託にしたいかによって契約内容をオーダーメイドで作成する必要があります。

この信託契約の設計は非常に重要で、設計内容によっては家族信託の効果が弱まるだけでなく、途中で信託契約が終了してしまったり、「こうしたいから家族信託を契約した」という行為が出来ないことがあるのです。

このような信託契約自体に不備が出てしまうデメリットがあるので、家族信託の設計を自分で行う人はあまりいません。

その為家族信託を利用しようと考えたときは、専門家に信託内容の設計を依頼することが主流となっています。

 

しかしそうは言っても「自分で出来るのなら自分でやりたいな」と思う方はいるでしょう。

そのような人の場合は、家族信託についてどのような手続きがあるのか、「家族信託の信託内容を失敗してしまったときにどうなるのか…」などの面が気になると思います。

手続き等に関してはまとめた記事が別にありますので、こちらをどうぞ

家族信託を自分で行う為にはどんな手続きが必要?

今回は信託自体に不具合が出るデメリットがあったとしても、家族信託を自分で行いたい方に向けて、「このような信託設計では失敗してしまいますよ」という失敗例を紹介します。

 

 

家族信託とは

家族信託の基本的な構造は

委託者:自分の財産を信託財産として、信頼できる人物を受託者として信託する人

受託者:委託者から信託財産を信託されて、契約に沿った管理運用をする人

受益者:信託財産からの利益を受ける人、複数人・何代でも設定可能

信託財産:委託者から受託者に信託される財産で、名義は受託者に、利益は受益者のものとなる。委託者=受益者の場合は贈与税がかからない

 

信託というと、信託銀行などが行う不特定多数に対して営利目的で行う、「商事信託」を想像するかもしれません。

しかしこのような企業を受託者とする商事信託以外にも、家族などの特定少数に対して非営利目的で行う信託があり、これを民事信託といいます。

家族信託は家族など、身近で信頼の出来る人物を受託者として自分の財産を信じて託す、民事信託のことを指します。

家族信託という言葉自体は正式なものではないのですが、家族のために行う民事信託を家族信託と呼んでいます。

 

家族信託の例としては

委託者兼当初受益者が父、受託者が子供、信託財産が賃貸マンションだとします。

信託財産である賃貸マンションの名義は父から子供になりますが、受益者が父のままなので贈与税はかかりません。

そして名義が子供になっており、父が認知症になっても問題なくアパートの管理運用ができるので、信託財産に関しては成年後見の機能があります。

第二受益者として子供2人、第三受益者として孫などの委託者の死では信託が終了しない設計なら、父が亡くなり遺産分割協議を行うときにも、信託財産は法定相続人の共有財産になることはなくそのまま管理運用が出来ます。

信託契約で「信託契約終了後残余財産は孫に遺贈する」としておけば、信託終了後の信託財産の行方も定めることが出来ます。

 

家族信託の遺言機能や成年後見機能などは「全ての機能」ではないので、遺言・成年後見制度でなければ出来ないことはあり、万能な制度というわけではありません。

どうしたいかの要望によっては、家族信託以外にも遺言や成年後見制度の併用を検討する必要があるでしょう。

とはいえ家族信託はその状況に合わせた信託内容にすることで、様々な状況に対応することが出来る優秀な制度です。

しかし柔軟に内容を決めることが出来るかわりに、状況に適した信託内容に出来ていないと不具合が出てきてしまうこともあるのです。

 

例えるならパソコンを自分で組み立てるようなものでしょうか。

自作パソコンは、自分の使いたい目的に適した性能のパソコンを、数多くあるパーツを選択し組み合わせることで自分に合ったパソコンを作り出します。

もしもこのときパーツを間違えて組み込んだり、繋いでしまうと正常に機能することはないでしょう。

これと同様に家族信託でも設計を失敗してしまうと、正常に機能しないことがあるのです。

 

 

家族信託の失敗例

受託者=受益者が1年以上続く信託

信託法には信託が終了する条件として、「受託者が受益権の全てを持っている状態が1年間継続したとき」というものがあり、これを1年ルールといいます。

信託設計として最初から受託者と受益者が完全に同一になってしまうことは、自己信託として設計していない限りほとんどないでしょう。

しかし信託契約の中で受益権が承継される際に受益権が受託者のものとなってしまい、信託が終了してしまうということは気をつけなければやってしまう可能性もあります。

 

登場人物

父:賃貸マンションのオーナーで現在長男に管理を任せているが、長男に子供がおらず長男の嫁にマンションが流れてしまうのは嫌なので長男の次には次男の子供に継がせたい

長男:配偶者はいるが子供はいない

次男:賃貸マンションに関与していないが、子供がいる

次男の子供(以後:孫)

 

信託設計の失敗例

委託者兼当初受益者:父

受託者兼第二受益者:長男

第三受益者:孫

信託財産:賃貸マンション・預金の一部

 

どこがいけないか

この失敗例では、父から長男に、長男から孫に受益権が承継されるように思えます。

しかしこの信託内容の場合は父の死によって受益権が第二受益者である長男に承継されると、受託者が全ての受益権を持っている状態になります。

つまり父が亡くなった後1年以上長男が存命すると1年ルールにより信託契約が終了してしまいますので、「家族信託で長男の嫁の家系ではなく自分の家系に信託財産を継がせたい」という想いは果たせなくなってしまいます。

 

どこを直せばいいか

受益権を1/2ずつなどに分けて長男だけではなく次男も第二受益者に設定することで、「委託者(長男)が全ての受益権を持つ」という状況を避けることが出来ます。

受益権がどう動くかについて考えながら信託設計をするといいでしょう。

 

 

信託契約中に受託者が亡くなってしまう信託

信託法には信託が終了する条件として「受託者がいなくなって1年間新しい受託者が現れなかったとき」というものがあります。

新しい受託者は「委託者と受益者の合意」「委託者がいない場合受益者単独」で選ぶことは出来ますが、信託契約の中で第二受益者として承継した方がそのことを知らなかった、忘れていた場合には信託は終了してしまいます。

 

登場人物

自分:賃貸マンションのオーナー、認知症になった場合の対策として誰かに管理を任せたいが、子供では頼りないので弟に任せたいと考えている。子供が独身で孫が望めないと判断し、子供の次は甥の子供に財産を継がせたい

子供:信託契約時は独身

弟・弟の孫

 

 

信託契約の失敗例

委託者兼当初受益者:自分

受託者:弟

第二受益者:子供

第三受益者:弟の孫

信託財産:賃貸マンション・預金の一部

 

どこがいけないか

この信託契約の場合第三受益者が甥ではなく弟の孫となっているので、第二受益者から第三受益者への承継に対する対策は出来ています。

しかし自分から子供への受益権の承継をした後、弟が先に亡くなってしまうと「受託者がいない信託」になってしまいます。

もしも受益者が新しい受託者を探す必要があるということを子供が忘れてしまっているか、家族信託が委託者と受託者の間でのみよく話されているという場合、新受託者がいない状態で1年間経過し信託が終了してしまいます。

 

どうすればいいか

受託者が信託契約中に亡くなってしまうことを考慮して、予備受託者を設定することで「受託者不在のまま新受託者を探すのを忘れて終了」というリスクは少なくなります。

また受託者は法人でもいいので、一般社団法人を立ち上げて法人を受託者とする方法もあります。

 

 

信託財産の処分も検討したはずだったのに、信託契約に「管理・運用」のみ記載

家族信託は受託者が信託財産を自由に管理運用することが出来るものだと思ってしまうかもしれませんが、あくまでも「信託契約に沿って」の運用になります。

その為インターネット上のテンプレートなどをそのまま流用してしまうと、大切なことが出来なくなってしまう危険性もあるのです。

 

登場人物

父:認知症になったときに自宅を売却してその資金で質のいい介護施設に入居したい

子供:もし父が認知症になったら、認知症進行予防に力を入れた介護施設に早めに入居してもらい出来る限り長く元気でいて欲しい

 

信託契約の失敗例

委託者兼受益者:父

受託者:子供

信託財産:自宅・預金の一部

契約内容:受託者は信託財産を管理運用する

 

どこがいけないか

契約内容で処分と記載されておらず管理運用しか認められていないので、このままでは自宅の大規模修繕や賃貸などは出来ますが、処分(売却)することは出来ません。

 

どうすればいいか

インターネット上の書式を流用するとこのようなことが起きやすいので、もしもネット上の書式を使うのであれば「その書式の契約内容で何をしようとしたのか」をしっかりと理解して自分の場合とどこが違うのかを把握しましょう。

 

 

信託財産は代々伝えたいものであったのに「管理運用処分」の記載

これは先ほどの「処分をしてもらいたかったけど、契約内容で処分を入れ忘れて不動産の売却が出来なくなった」場合の逆パターンです。

先祖代々受け継いできた土地を、しっかりと管理運用してもらいたいと信託契約を結んだ場合でも、契約内容で「財産の管理運用処分」を記載してしまったという場合受託者は代々続く土地の売却が可能になってしまいます。

もしも受託者が誰かにそそのかされて「土地は売却した方がいい」と思ってしまうと、土地を売却してしまう可能性もあるのです。

対応策は先ほどと同様、参考にする書式の内容をしっかりと把握し、自分の場合と違うとことを注意して直すようにすることでしょう。

 

 

財産隔離機能を悪用して借金の差し押さえにならないように家族信託を活用

信託財産の名義は委託者から受託者に変わりますが、受託者固有の財産というわけでもありません。

どちらの固有財産でもなくなった信託財産は、例え信託契約締結後に委託者が倒産・破産してしまっても信託契約に影響はありません。

受託者が倒産・破産しても信託財産が差し押さえられることはありませんが、受託者が破産手続きを開始した段階で信託が終了ということになります。

 

これを倒産隔離機能といいます。

この機能を悪用して「固有の財産を全て信託財産にして差し押さえを回避しよう!」という信託契約を考える方もいるのですが、信託財産に影響はなくても「受益権」は差し押さえられてしまうので、あまり意味はないでしょう。

また詐害信託として信託自体の取り消しをされてしまうこともあるので、債務者の責任逃れに信託を利用しようというのは非常に難しくなっています。

 

 

自分の財産を全て信託財産にして自分が使える財産がなくなった

家族信託によって自分の相続だけでなく、2代、3代にわたる相続に関しても関与することが出来ます。

しかし自分の持つ全ての財産の行き先を家族信託で定めようとすると、自分の財産全てを信託財産としなければならなくなります。

そして信託財産は委託者固有の財産ではなくなり受託者の名義となり、受託者が管理することになるので委託者が自由に使うことは出来なくなるのです。

自分の財産の行く末を決めたいとしても、自分が使う財産は確保しておいた方がいいでしょう。

 

 

ひ孫、玄孫の代まで細かい信託設計にしたら、半分もいかずに30年経過してしまった

信託法では「受益者が連続する信託は、信託契約締結から30年経過すると、その次の受益者が最終受益者となる」という内容があります。

その為4代、5代先の相続について信託契約で定めていたとしても、30年経過した時点の受益者が亡くなり次の受益者に受益権が承継された段階で、それ以降の受益権の承継は出来なくなります。

信託契約ではその時点で生まれていない人物も指定できるため、信託契約上ひ孫どころか玄孫(やしゃご)のその先である来孫(らいそん)、昆孫(こんそん)、仍孫(じょうそん)、雲孫(うんそん)という普通は考えることのないであろう代まで指定することが出来ます。

しかし30年ルールが存在する以上、あまり聞き馴染みのない玄孫の先を設定するのはあまり意味がないでしょう。

 

 

まとめ

いかがでしょうか?

今回は信託契約の構造上起こってしまうことのある初歩的な失敗例を紹介しました。

このような失敗は少し気をつければ問題はないので、あとは契約書の中身をスマートにまとめるかでしょう。

信託契約の契約書というと膨大な量のものを想像するかもしれませんが、商事信託のような受託者に多くの制約を課す項目はないので、そこまで難解な契約書にはなりません。

流通しているような商事信託寄りのテンプレートを使って家族信託の契約書を製作している、又は民事信託と商事信託が混ざってしまって覚えている専門家の作る契約書は、必要以上に受託者を縛る事項が入ってしまっているなどの理由から膨大な量の契約書になってしまいがちです。

 

しかし家族信託の契約書は、家族信託そのものについての理解がある方が作ればA4用紙4~5枚程度にまとめることが出来ます。

あまり受託者を縛る項目が多すぎれば受託者の負担が跳ね上がりますし、少なすぎると契約内容の意味が薄れてしまいます。

この信託契約の中身を過不足なくまとめられるかどうかが、家族信託の設計をするものの腕の見せ所となります。

家族信託の設計自体はそこまでハードルは高くないので、あなたでも行うことは可能です。

もしも「絶対に自分で設計したい」というのであれば、形にはなると思われます。

しかし適切な信託契約とすることが出来るかというと、それは難しいでしょう。

 

家族信託を適切に作成することは、例え弁護士や司法書士のような法律の専門家であっても、家族信託についての理解が少なければ「無駄な項目の多い信託」などになってしまい適切には出来ないでしょう。

過不足のない適切な家族信託契約をするのであれば、やはり家族信託について造詣の深い家族信託普及協会の家族信託コーディネーターのような、家族信託の専門家に依頼するのがいいでしょう。

相続サロン多摩相談センターには家族信託コーディネーターであり、相続についての理解も深い相続コンサルタントでもある家族信託以外の相続対策も含めた相続の専門家が在籍しています。

不動産の専門家でもあるので、財産に不動産の割合が多い相続に対して特に強いので是非ご相談ください。

相続サロン多摩相談センターへの相談はこちらからどうぞ

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