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家族信託だけよりも成年後見制度を併用した方が良い理由

 2017/05/16 家族信託 成年後見制度
この記事は約 12 分で読めます。

メディアでも相続対策に関わる特集を組まれるようになったことで、家族信託や成年後見制度の名前だけでも聞いたことがあるという人は多いでしょう。

相続税の基礎控除額が減額になる法改正が平成27年にあり、相続に関心を持つ方は多くなってきました。

その為テレビなどで家族信託について特集しているのをご覧になったり、相続セミナーなどに参加したりして「家族信託ってうちでも使えるのかな?」と興味を持たれる方も増えてきました。

家族信託は幅広い状況に対応できる優秀な制度ですので「家族信託さえやっておけば大丈夫だろう」と思ってしまう方もいらっしゃるのですが、家族信託よりも別の制度が適している場合、家族信託だけでなく他の制度も活用した方がいい場合もあります。

 

例えば成年後見制度です。

家族信託では委託者が託す信託財産の名義は受託者になるので、委託者が認知症などで判断能力がなくなっても成年後見制度を利用せず信託財産を管理運用することが出来ます。

成年後見制度と異なり信託契約に沿った柔軟な資産運用が出来るので、家族信託のメリットを紹介する際「成年後見制度の機能も含む」ということも挙げることができます。

しかし、この成年後見制度の機能があると言っても成年後見制度の機能全てを持っているわけではないのです。

その為家族信託と成年後見制度両方を活用したり、家族信託ではなく成年後見制度を利用した方がいい場合もあるのです。

そこで今回は、家族信託と成年後見制度について紹介し、どういう点が足りないのか、2つの制度を併用した方がいい場合などを紹介していきます。

 

 

家族信託とは

家族信託は、商事信託のような信託銀行などを受託者として不特定多数・営利目的で信託契約を結ぶ商事信託ではなく、家族などの身近で信頼の出来る人物を受託者として自分の財産を信じて託す、民事信託です。

家族信託という言葉自体は正式なものではないのですが、家族のために行う民事信託を家族信託と呼んでいます。

 

家族信託の基本的な構造は

委託者:自分の財産を信託財産として、信頼できる人物を受託者として信託する人

受託者:委託者から信託財産を信託されて、契約に沿った管理運用をする人

受益者:信託財産からの利益を受ける人、複数人・何代でも設定可能

信託財産:委託者から受託者に信託される財産で、名義は受託者に、利益は受益者のものとなる。委託者=受益者の場合は贈与税がかからない

 

家族信託の例としては

委託者兼当初受益者が父、受託者が子供、信託財産が賃貸マンションだとします。

信託財産である賃貸マンションの名義は父から子供になりますが、受益者が父のままなので贈与税はかかりません。

そして名義が子供になっているので、父が認知症になっても問題なくアパートの管理運用ができるので、信託財産に関しては成年後見の機能があります。

第二受益者として子供2人、第三受益者として孫などの委託者の死では信託が終了しない設定をしておけば、父が亡くなり遺産分割協議を行うときにも法定相続人の共有財産になることはなくそのまま管理運用が出来ます。

信託契約で「信託契約終了後残余財産は孫に遺贈する」としておけば、信託終了後の信託財産の行方も定めることが出来ます。

 

 

成年後見制度とは

認知症、知的障害、精神障害などで判断能力が不十分になった・なくなったという場合、不動産、預貯金等の財産管理、介護サービス、施設への入居、遺産分割協議等の行為を自分で行うことが難しくなります。

訪問販売でどう考えても必要ないものを買う、生活費を考慮せず子供などに言われるがままお金を使い込んでしまったりということは、判断能力がある人でも陥ってしまいやすいことです。

判断能力がなくなってしまった人であれば、悪徳業者などからすればカモがネギを背負ってきているようにしか見えないでしょう。

また遺産分割協議などで言われるがまま自分に不利益にしかならないような遺産分割協議書に署名してしまったりといった危険性もあります。

 

その為金融機関などは本人の財産を守る為に本人の意思を確認するようなっているので、判断能力がなくなってしまうと預金を引き出せなくなったり、定期預金の解約も出来なくなります。

不動産売買やリフォームのような大規模修繕などの契約も出来なくなり、アパートなどの賃貸借契約も出来なくなります。

悪徳商法などでの売買契約も判断能力がなければ無効となるのですが、売買契約をしたときに「既に判断能力がなかった」ということを証明することは難しくなっています。

成年後見制度はこのような判断能力がなくなってしまった人が生活に支障を出してしまわないように保護・支援する為の制度です。

 

成年後見制度には本人に判断能力がある内に後見人になる人物と直接契約する任意後見制度と、判断能力がなくなってしまった後に申し立てをする法定後見制度があります。

認知症などで判断能力がなくなってしまうと売買契約などの行為は出来なくなるのですが、成年後見制度を利用して成年被後見人となった場合は裁判所の監視の下、成年後見人が代理権を持ち代わりに契約をすることが出来ます。

介護施設への入居など介護サービスや通院などの治療に関する手続き、生活環境の整備などの被後見人の生活に支障が出ないよう適切な生活が送れるようにする身上監護も、成年後見人の職務となります。

 

 

家族信託と成年後見制度の足りない点

家族信託も成年後見制度も、認知症などで判断能力がなくなった後の財産管理を可能にする優秀な制度です。

しかし家族信託で財産管理できるのは信託財産のみですし、成年後見制度を利用すると財産の用途が「本人の為」に限られて家族のために使えなくなるなど、足りない点もあります。

そこで家族信託・成年後見制度の使いにくい点・足りない点を挙げていきます。

 

 

家族信託の足りない点

  • 家族信託は信託財産以外に関しては関与できない
  • 家族信託は財産管理のみで身上看護はない
  • 成年後見制度と比較すると受託者の監視能力が低い

 

家族信託は信託財産以外に関しては関与できない

家族信託は委託者が受託者に信託財産を信託する制度です。

その為信託財産は受託者の名義財産となり信託契約に沿った管理運用が出来るのですが、それ以外の財産については委託者固有の財産のままです。

つまり家族信託で判断能力がなくなっても収益不動産を管理運用できるようにしていても、それ以外の財産については成年後見制度を利用する必要が出てくるのです。

なお全ての財産を信託財産にする場合、委託者固有の財産はなくなってしまい自分が好きに使える財産がなくなってしまいますので注意が必要です。

 

 

家族信託は財産管理のみで身上看護はない

家族信託の契約内容で信託財産を委託者の介護サービスなどの費用にすることで、認知症になった後お金に困ることがないようにすること自体は家族信託でも出来ます。

しかし家族信託はあくまで受託者が信託財産の管理をする制度なので、後見制度の身上監護に近いことは出来ても、成年後見制度以上に本人を守る信託には出来ません。

その為身上監護の面で不便さを感じてしまうこともあるかもしれません。

 

 

成年後見制度と比較すると受託者の監視能力が低い

家族信託では基本的に受益者などが、受託者が契約通りに運用するかを監視し、不安を感じるようであれば信託監督人に専門家などを設置し監督してもらうことになります。

成年後見制度では家庭裁判所に定期報告をする義務がありますし、任意後見制度などで親族が後見人となった場合は後見監督人が選任されるので、家族信託よりも監視能力は高くなっています。

とはいえ、成年後見制度の場合この報告義務などが負担となってしまうことも多いので、本当に信頼できる人物に信託するのであれば、家族信託の方が負担は少なくなります。

 

 

成年後見制度の足りない点

  • 財産の利用が「本人の為」に限られる
  • 財産の管理は「静的な」管理に限られる
  • 家庭裁判所の監視が厳しい

 

財産の利用が「本人の為」に限られる

任意後見制度であれば本人の意思をある程度反映することも出来るのですが、法定後見制度での成年後見人を申し立てすると原則本人のためにしか財産を利用することが出来なくなります。

この本人の為というのは元気なときの本人の意向などはあまり考慮されておらず、例え「孫が進学する際には養育費・教育費として生前贈与していて、孫の成長を実感できることがとても嬉しい」と言っていたとします。

しかし孫への生前贈与は本人の為ではなく孫の為の行為になりますので、認知症などで判断能力がなくなった段階で生前贈与は出来なくなります。

 

また遺産分割協議で成年後見人は本人が獲得できる財産を確保しなければならないので、法定相続分を要求することしか出来ません。

「財産が自宅と少しの預金だけだから、俺が相続して母さんとの共有財産にならないようにしたい」という希望があったとしても、母の成年後見人はその希望を認めることは出来ません。

成年被相続人が持分を持った共有財産がある場合、所有者全員の合意がなければ売却や大規模修繕といった行為は出来ないので、共有財産になってしまうことは避けたいのですが相続財産の状況によっては共有財産にせざる得ないこともあるのです。

 

 

財産の管理は「静的な」管理に限られる

成年被後見人の役割は被後見人の財産を維持することで、その方法は原則「静的な財産管理」で、資産運用することは出来ません。

また高価な売買契約に関しては、事前に家庭裁判所に申し立てをして許可が得られなければ行うことは出来ません。

その為「所有している株式の売買で利益を得ようとする」「収益不動産の新規賃貸借契約や世代に合わせた大規模修繕やリフォーム」「借り入れをして今ある土地にアパートを建てる」といった動的な財産管理をすることは原則できなくなっています。

株式は著しく価値が激減しない限り売却の許可は下りませんし、他に財産があったりすると自宅を売却して介護費用に…ということも非常に難しいでしょう。

 

 

家庭裁判所の監視が厳しい

成年後見制度は定期的に家庭裁判所に後見事務報告書などの提出が必要になりますし、事前に裁判所に申し立てをして許可を受けなければならない行為をする場合はその都度申し立てを行わなければならなくなります。

その為親族が成年後見人となった場合は煩雑な業務が負担としてのしかかるようになるのです。

 

 

家族信託と成年後見制度の併用でより安全に

家族信託と成年後見制度をそれぞれだけでは足りないと感じるところも出てきますが、両方の制度を活用することでその点を補うことができるようになります。

例えば成年後見制度で問題となる財産の資産運用・生前贈与などがほぼ出来なくなってしまうという点ですが

  • 資産運用が必要な賃貸物件や株式、土地などの財産とその運用資金を信託財産とし、信託財産の資産運用を行う信託契約の家族信託
  • 孫への生前贈与などに必要な預金を信託財産として、必要に応じて孫に教育費・養育費の贈与を行う信託契約の家族信託
  • 自宅を主な信託財産とし、認知症などで判断能力がなくなり介護施設に入居する際自宅を売却し介護費用に充てる信託契約の家族信託

を結べばよいのです。

 

資産運用が必要ない財産が遺産分割のときにも分割しやすい状況であるのなら、成年後見制度でその都度本人の為に利用すればあまり困ることもないでしょう。

成年後見人としても、収益物件や売却したい不動産などの扱いが難しく手続きが煩雑になる原因となる財産が減るので、報告などの手続きがやりやすくなります。

 

また家族信託で自宅を売却し介護費用に充てるといった信託内容にしていても、成年後見人とは違い身上監護までは定めることはできません。

その為手続き等で不便を感じてしまうことがあります。

この場合でも成年後見制度と併用していれば問題はなくなるでしょう。

成年後見人は身上監護も含めた身上配慮義務があるので、介護サービスの利用や治療行為のための契約はしなければならない立場にあります。

成年後見人がいれば、家族信託で介護費用を作り出すだけでは不便に感じることもあった身上監護の不便さを感じずに済むのです。

 

成年後見人がいる状態での遺産分割協議では原則として法定相続分を成年被後見人に取得させなければいけなくなるのですが、このときに不動産のような分割がしにくい財産は信託財産とすることでも解決することが出来ます。

例えば認知症で判断能力がなくなっているとして成年後見制度を利用している母がいて、父の財産の多くが賃貸マンションだったとします。

この場合父の相続時に、不動産以外の財産では母の法定相続分(1/2)を満たせない場合不動産を共有財産としなければならない可能性が高いです。

このとき収益不動産を信託財産として委託者兼当初受益者を父、受託者を子供、受益権を1/2ずつ割り振り母と子供の2人を第二受益者とした信託契約を設定します。

父がこの家族信託を子供と結んでおけば、父の相続発生時に名義は子供のまま受益権として母の法定相続分財産を確保できるので、子供単独で大規模修繕などが行えるようになるのです。

 

 

あなたに合わせた制度の併用はお任せください

いかがでしょうか?

家族信託は多くの場合に対応できる柔軟な制度ですが、成年後見制度のようなほかの制度と組み合わせると更にあなたに合った認知症などの対策、相続対策とすることが出来ます。

「家族信託っていいな」と思っても、あなたの状況によっては成年後見制度のみで十分対応できる可能性もありますし、遺言などの他の制度で対応した方がいい場合もあります。

このような様々な制度を検討した上での相続対策を考えようとすると、どうしても相続に関する幅広い知識が必要になります。

 

しかし最近普及している家族信託をメインに扱う専門家の中には、「家族信託は万能だから家族信託だけで相続対策は出来る!」と考えている方も少なからず存在するので注意が必要です。

相続サロン多摩相談センターには、NISCO公認 相続コンサルタント®、家族信託コーディネーター®である家族信託を含めた相続に関する幅広い知識をもった専門家が在籍しています。

宅地建物取引士であり不動産の専門家でもあり、財産に不動産が多いときにも適切な相続対策を提案することが出来ます。

相続対策をお考えでしたら、是非相続サロン多摩相談センターにご相談ください。

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