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メリットだけではなくデメリットも。家族信託が万能な制度だと思ってはいけない?

 2017/05/13 家族信託 家族信託とは 相続対策
この記事は約 10 分で読めます。

近年家族信託がメディアでとりあげられるようになり知名度が高くなってきました。

とくに、NHKのあさイチ「実家の後始末」特集の中で家族信託がクローズアップされてからは家族信託の認知度は全国区に広がった感があります。

 

さて、家族信託はこれまで別々に契約しなければならなかった委任契約、成年後見制度、遺言といった機能を盛り込むことが可能なだけでなく、これまでの民法では不可能だった数代先の相続(数次相続)にも干渉することが可能となります。

このような幅広い機能を持つので、「家族信託一つでどのような相続対策も可能となる!」というイメージを持ってしまっている方も少なくありません。

 

しかし家族信託は遺言など他の制度の機能「全て」を持っているわけではなく、あくまで「遺言の機能も備えている」というものです。

その為場合によっては家族信託と遺言を併用したり、家族信託は採用せず遺言だけで十分というケースも存在します。

家族信託を勧めてくる専門家を名乗る方の中には、どのようなケースであっても家族信託を勧めてくるという人もいます。

しかし家族信託で出来ること、出来ないことを知っている専門家の場合、家族信託を提案せず、他の相続対策を提案することもあります。

 

「家族信託について気になったから相談に来たのに、なんで任意後見制度なんだろう?」

当サイトや家族信託普及協会から相続サロン多摩相談センターに相談に来られる方は家族信託について感心があったからこそ相談にいらっしゃるので、家族信託を提案されないことがあることに不満があるかもしれません。

しかし「受託者(財産が託される人)として適切な人がいない」「話を聞くと財産を守るのではなく身上監護を最重要視していた」といったような状況の場合などでは、家族信託以外の対策を選択した方がいいのです。

ここまでの話で「家族信託って実は使えない制度なの?」と思われるかもしれませんね。

 

もちろん家族信託という制度は幅広い状況に対応できる素晴らしい制度ですが、どのような素晴らしい効能のある薬でも全ての疾病を治療できる「万能薬」は存在しないように全てに対応することは出来ないということです。

そこで今回は、そのような家族信託では対応できない・対応が難しいケースを紹介します。

 

 

家族信託のメリットとは

信託銀行などが営利目的で不特定多数を対象に行う商事信託と異なり、家族のような身近な人に自分の財産を信じて託す非営利目的の信託を民事信託といいます。

家族信託の基本的な構造は以下のようになります。

委託者:自分の財産を信託財産として、信頼できる人物を受託者として信託する人

受託者:委託者から信託財産を信託されて、契約に沿った管理運用をする人

受益者:信託財産からの利益を受ける人

信託財産:委託者から受託者に信託される財産で、名義は受託者に、利益は受益者のものとなる

 

 

信託財産を賃貸マンション、委託者を父、受託者を子供、受益者を父とします。

信託財産である賃貸マンションの名義は子供になりますが、賃料のような利益は受益者である父のままとなります。

名義だけが変わるようになるので、この場合であれば贈与税はかかりません。

 

 

家族信託が持っている他の制度の機能

信託契約により名義が変わるので委任契約と同様にその都度委任状を書かなくとも信託契約に沿った管理運用をしてくれる

⇒委任契約の機能

 

信託契約により名義が変わるので委託者が認知症などになった場合でも変わらず契約に沿った資産運用が可能

⇒後見制度の機能

 

当初受益者の次に第二受益者を設定できる・信託契約終了時に財産がどうなるのかを指定できる

⇒遺言の機能

 

第二受益者の次に第三受益者、第四受益者といったように連続して受益権を承継できる

⇒これまでの民法では出来なかった数次相続への干渉

 

当初受益者が委託者であれば贈与税がかからず名義を移動できる

⇒事業継承にもなる

 

といったように家族信託には他の制度の機能を備えていて、他の制度では出来なかったことも出来るようになったということで、近年注目されているのです。

 

 

家族信託は万能ではない、デメリットは?

家族信託のメリットを挙げていると、遺言など複数の制度の機能を持つ万能な制度に感じます。

しかし全ての機能を持つ訳ではなく、それぞれの制度を利用しなければ出来ないことがあるのも事実です。

 

成年後見制度は被後見人を守ってくれる制度

後見制度は被後見人の財産を管理する為だけの制度ではなく、被後見人の身上監護の機能もあります。

家族信託の場合、財産管理機能は信託財産においては後見制度以上に契約に沿った柔軟な管理運用を行うことが出来ます。

しかし信託財産にしていない被後見人固有の財産については何も出来ませんし、身上監護の機能がありません。

 

信託契約の内容でカバーできる部分もありはしますが、身上監護の面でみると家族信託のみで適切な身上監護は難しいですし、信託財産以外の財産は凍結されてしまいます。

「後見制度は使いたくない」ということで家族信託に注目する方もいるかもしれません。

しかし管理運用が必要な財産が特になく、成年後見制度のみで対処できる場合には無理して家族信託を選択する必要はないのです。

 

成年後見制度には

  • 自宅の売却や株式・賃貸物件大規模修繕、新しい賃貸借契約といった財産の管理運用が出来ない
  • 本人以外の為には財産を使うことが出来なくなる

といったことが原則として出来ないというデメリットがあります。

 

その為

  • 株式や賃貸アパートなどの収益性のある財産がある
  • 認知症などになった後に自宅を売却して介護施設への入居費用に充てたい
  • 認知症などになった後にも孫に教育費・養育費を贈りたい

などのような場合、成年後見制度を利用してしまうと実行することは非常に難しくなります。

その為株式や賃貸アパートなどの収益物件など遺産分割で共有財産にしたくないものを信託財産とした家族信託を活用し、それ以外の財産の管理と委託者(被後見人)の身上看護については成年後見制度を活用するといった、制度の併用をするようになるでしょう。

 

 

遺言は思っている以上に多彩な効果がある

家族信託で第二第三の受益者を定めたり信託契約解除後の財産の行方を定めることができますが、遺言にはそれ以外の効果もあります。

例えば結婚をしていない女性との間に生まれた子供の認知、遺留分減殺請求をされたときにどの財産から減殺していくかの指定、相続人の廃除、後見人・貢献監督人の指定、誰が先祖代々の墓地などの管理をするか、特別受益の持ち戻し免除といった機能は家族信託では出来ません。

また家族信託で行方を定められるのは信託財産だけなので、家族信託だけで全ての財産の相続先を定めようとした場合、本人の財産全てを信託財産とする必要が出てきます。

 

その為場合によっては家族信託よりも遺言の方が適している場合もあり、必ずしも他の制度の機能もある家族信託の方が優秀ということにはなりません。

例えば「確かに昔長男の自宅の建築費用を援助したけど、それが原因で相続時に財産が少なくなってしまうのは本意じゃない」と親が思っていたとしても、その意思表示は遺言で遺さなければ特別受益を主張されて長男の相続分は減ってしまいます。

家族信託の遺言機能で信託財産についてどう承継するのか定めただけですと、それ以外の財産について特別受益が適用されてしまう可能性が高いのです。

現在はインターネットで特別受益や寄与分、遺留分といった制度を知りやすい環境になっているので、これらの主張をされないと思い込んでしまうのは危険です。

 

家族信託の方がいい場合は?

家族信託で遺言機能を活用するときのメリットは

  • 遺産分割協議を終わらせなくても受託者が管理運用可能
  • 受益権を分割して承継することが可能なので、賃貸マンションなどの名義を共有化せずに利益を分け合うことが出来る
  • 遺言では遺留分減殺請求をされると全ての相続財産が共有財産になってしまうが、信託財産に関しては変わらず受託者の名義のまま受託者が管理運用できる
  • 遺言では子供に相続させた財産の次の相続先を定めることが出来ないが、信託財産は数代先の相続に関してもコントロール可能

といったものとなります。

 

収益物件を所有しており、現金のような分割できる財産が少ない場合、そのままの状態での分割を遺言で指定すると遺留分を侵害してしまう可能性があります。

そのようなときに収益物件を信託財産とした家族信託を行い、その受益権を分割して継承させるようにすると、収益物件を売却せず、共有化もさせないままに遺留分対策をすることが出来るようになります。

この場合それ以外の財産についての遺言を残しておくことで全ての財産の遺産分割を指定できます。

 

他にも「同居して色々助けてくれた長男夫婦にはそのまま実家に住み続けて欲しいけど、長男に子供がいないから長男に渡った財産はお嫁さんの家系に渡ってしまう…」ということを気にされる場合、実家を信託財産とした家族信託を結び第二受益者を長男とし、第三受益者を次男の子供(第三受益者を長男妻、第四受益者を次男子供にするのもアリです)にすることで、長男に実家を継承しつつも最終的に自分の家系の孫に財産が戻るようにすることが出来るのです。

 

また認知症になってしまうと、アパートなど収益不動産の新規賃貸借契約や大規模修繕などの契約が出来なくなってしまい相続発生時には空き部屋が目立つ、最低限の修繕しか出来ずボロが出てしまっているケースが少なくありません。

そのような遺言だけでなく、健康年齢を過ぎて亡くなるまでの期間を含めた対策としてですと、亡くなった後のことしか定められない遺言よりも後見制度の機能もある家族信託の方が適した対策となります。

 

 

家族信託にすべきか他の相続対策にすべきか迷ったときは

いかがでしょうか?

家族信託は確かに様々な状況に対して柔軟に設計することの出来る優れた制度ですが、全ての状況に「家族信託だけ」で対応できるかというと、そういうわけではありません。

家族信託では対応出来ない部分を別の制度で補ったり、家族信託は必要なく別の制度を利用する方があなたの要望通りの対策を実現できるかもしれません。

 

このような「あなたにとって適した対策」を見つけ出すことは、自分1人で対策を調べるだけでは難しいでしょう。

また専門家であっても、家族信託を過信しすぎて「家族信託だけでどんな問題も解決できます!」として他の相続対策を一切考慮しない方々も少なくありません。

そのような家族信託について偏った知識になっている専門家に当たってしまうと、一歩引いて考えれば別の対策を思いついたはずなのに家族信託に依存した対策をしてしまいかねません。

 

家族信託普及協会の家族信託コーディネーターは家族信託についてのしっかりとした知識を持っているので、家族信託で出来ること・出来ないことを正確に把握している専門家です。

相続サロン多摩相談センターには家族信託普及協会の家族信託コーディネーターが在籍していますので、家族信託以外の方法も含めた相続対策をしたいとお考えの場合是非ご相談ください。

相続サロン多摩相談センターへの相談はこちらからどうぞ

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古谷

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