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家族信託がどれくらい柔軟な制度か知っていますか?

 2017/04/29 家族信託 家族信託とは
この記事は約 15 分で読めます。

近年家族信託の認知度が上がっていますが、家族信託がどのような制度か知っていますか?

家族信託は信託銀行などの行う商事信託とは異なり、特定少数を対象に非営利目的で行う民事信託です。

家族信託は正式な法律用語ではありませんが、民事信託が「信頼できる人物に財産を託す」制度であり、その多くが家族同士で行われることから、家族信託という言葉が生まれました。

家族信託で登場するのは託される財産である信託財産、信託財産を託す委託者、信託財産を託される受託者、信託財産から利益を受ける受益者です。

 

基本的な構造としては委託者が信頼する人物である受託者に信託財産を託し、信託財産からの利益を受益者が受けるというものです。

基本的な構造だけを見るとシンプルですが、誰を受託者・受益者にするか、最初の受益者の次は誰を受益者にするか、何人にするかなど柔軟性があります。

そしてこの柔軟性によって、家族信託は様々な相続対策に用いることが出来るのです。

そこで今回は、家族信託がどのようなものか、どのような対策として使われているのかを紹介します。

 

 

家族信託とは

信託というと、CMなどの目に入りやすい広告で宣伝されることの多い、信託銀行などが行う商事信託を想像するかと思います。

しかし信託には信託銀行に財産を託す商事信託以外にも民事信託があり、民事信託は信頼できる人物に自分の財産を信じて託す信託を指します。

この信頼できる人物として家族が挙がることが多く、親しみやすくイメージしやすいよう家族信託として普及されるようになりました。

 

家族信託は自分の財産を信じられる家族を信じて託し契約内容に沿って管理・運用をしてもらうもので、託される財産を信託財産とし、3つの役割が登場します。

委託者 受託者に財産を託す人

受託者 委託者から財産を託される人

受益者 信託財産から利益を受ける人

家族信託を行うと、信託財産の名義は委託者から受託者に移り、信託財産から得られる利益は受益者のものとなります。

 

例えば父が子供に自分の保有する賃貸マンションを信託したとします。

父を委託者兼受益者、子供を受託者として家族信託を行うと、アパートの名義は受託者である子供となり、契約に沿って管理・運用を行いますが、賃料収入、固定資産税などの出費は受益者である父のものとなります。

ここで「えっ、名義が移っちゃうの?」と思うかもしれません。

家族信託の説明で「家族に財産を預ける」としているところもありますが、預けるというと「最終的に自分に返してもらう」というイメージが強くなってしまいます。

このイメージで家族信託を調べてみたら名義が変わるということで、「敷居が高く感じる」「自分の財産じゃなくなるのは・・・」と二の足を踏む人は少なくないでしょう。

 

家族信託で名義が変わるとはいっても、信託財産の用途は契約で縛られているので好き勝手に使われるということにもなりません。

賃貸借契約や不動産売買などの契約は、判断能力が無ければできません。

その為認知症などで判断能力がなくなると、契約行為は出来なくなります。

名義が父のままで管理を子供としていた場合、子供は父の代理として契約行為をしています。

子供による代理行為は父に判断能力があり最終的な判断は父が行っているという前提なので、父の判断能力がなくなってしまえばそれ以降の契約行為は出来なくなるのです。

 

 

成年後見制度では管理運用は出来ない

「後見制度を利用すればいいんじゃない?」と思うかもしれません。

しかし、成年後見制度は被成年後見人(判断能力がなくなった方)の財産を維持することが重要視されており、財産の運用は原則行えません。

その為成年後見制度では新しい賃貸借契約や売買契約を結ぶことが出来ないばかりか、リフォーム等の大規模修繕もできないのです。

株式なども、価値が著しく急落しない限り売却は出来ないと考えたほうがいいでしょう。

 

名義さえ変わっていれば父が認知症になっていても関係なく子供が財産の管理運用を出来るようになるので、認知症対策の観点でみると名義は変わっていた方がいいのです。

そして名義が変わるといっても、受託者は信託契約に沿った管理運用をしなければならないので、勝手な行動は出来ません。

例えば「受託者は信託財産(賃貸マンション)の管理運用を行う」となっていた場合、賃貸借契約やリフォーム等の管理運用は出来ますが、売却は出来ません。

その為先祖伝来の土地に建っている賃貸マンションなど、管理運用はして欲しいけど売却はして欲しくない!というときにも安心できるのです。

 

なおこの点ですが、「実家を信託財産にして、自分が認知症になったら実家を売却してそのお金で介護施設に入れてもらおう」など不動産の売却を視野に入れている場合、「管理運用・処分」などで売却できることを契約内容に組み込まなければならないので注意しましょう。

 

 

家族信託(民事信託)のバリエーション

民事信託は商事信託のようなパッケージ商品ではなく、構造を柔軟に組み帰ることが出来ます。

その為「擬似的な家督相続にしたい」「自分亡き後のペットが心配」「完全に子供に渡すのは心配だけど、収益不動産を子供に任せて隠居したい」といった様々な状況に対応した民事信託を構築することが出来ます。

 

 

擬似的な家督相続を可能にする家族信託

家督相続は旧民法で存在した長男1人に財産を相続させる相続の種類です。

ただ家督相続というと「長男だけに財産相続させる昔の習慣だ」と感じる人は多いでしょう。

しかし、「自分の家系の財産は自分の家系に継いでもらいたい!」というのは、家督相続を望まない人であっても思うのではないでしょうか?

 

もしも子供が2人(A,B)いて、Aは「結婚をしていても子供はいない」という場合、その子供Aが亡くなったときに親が死去されている場合、法定相続分で分割するとその財産は配偶者が3/4、子供Bは1/4の財産を相続することになるでしょう。

この部分だけを見れば「それはそうだろう」と思いますが、このときに配偶者に相続される財産には「父から相続された財産」が含まれているのです。

例えばAが長男で父と同居していたとします。

そうなると大体の場合父の実家はAが相続することになり、Aの相続時には配偶者が実家を相続しなければ生活が出来なくなるでしょうからAの配偶者が相続するでしょう。

 

ここまで流れてしまうと、Aの配偶者の相続発生時には父の家系の人間は相続人とはならないので、Aの配偶者の家系に実家が取られてしまうのです。

もしも実家が先祖伝来のものであった場合であっても、その土地はもう戻ってきません。

このような財産の流出も家族相続では防ぐことが出来るのです。

遺言では出来ない、一族に財産を残す相続対策とは

 

 

孫への生前贈与を続ける為の家族信託

認知症になり判断能力がなくなると財産が凍結されてしまい、その後成年後見人をつけても「自分の為」にしか使えなくなります。

その為「孫が大学卒業するまでは教育費などを出してあげたい」と思っていたとしても、途中で認知症になってしまってはそれも不可能になってしまいます。

信託銀行の教育資金の一括贈与という制度を使えば信託銀行の口座から請求書や領収書を提出することでその都度口座から引き出せるようになりますが、対象外となるものも存在します。

 

例えば自宅から離れた大学に通おうとすると一人暮らしをすることになりますが、その一人暮らしにかかる費用は対象外となることが多いのです。

その為教育費・養育費として使えるようにするには、信託銀行の教育資金の一括贈与では不十分となってしまいます。

このようなときにでも、家族信託を活用することで認知症になっても、自分亡き後も孫に贈与を続けることが出来るようになるのです。

契約内容で教育費だけでなく養育費としても贈与することが出来るようになるので、大学生活などでの孫の一人暮らしも応援することが出来ますし、元気な内は自分で贈与することが出来るので孫の笑顔を長く見続けることが出来ます。

認知症になってからも孫の助けになりたいあなたの為の家族信託

 

 

自分亡き後のペットを守る民事信託

本人からすればペットも今現在一緒に暮らす家族ですが、子供からすればペットよりも親の方が大事ですし、親のペットよりも自分の家族(配偶者・子供)が大切になります。

その為遺産分割の際に親のペットのことは頭から離れてしまうこともありますし、ペットを誰が引き取るかで揉めたと言うケースもあります。

「あの人はうちのペットを大切にしてくれるだろう」と賃貸マンションと一緒に遺贈した結果、ペットの世話を一切せずに餓死させてしまい、賃貸マンションはしっかりと受け取ったというケースも事実として存在します。

 

遺言で負担付遺贈(財産を渡すときに条件をつける)をするとある程度法的拘束力がありますが、遺贈の場合は「いらない」と拒否されてしまうことがあります。

家族信託のような契約をすれば事前にどうするかを話し合うことにもなるので、ペットをペットホームに預けたり、自分たちで育てたり里親を探すなどの方向性を決めることが出来ます。

更に信託財産は相続財産と異なり名義は受託者のままなので、遺産分割が進まなくてもペットの為のお金は信託財産から出すことが出来ます。

自分亡き後大事なペットをどうするか決めていますか?

 

 

親不孝者に財産を残さないための家族信託

ギャンブルや借金の常習者であったり、あまりよくない組織と付き合いがあるなどの素行の悪い親不孝者が兄妹にいる場合、その人物には財産を渡したくないと考えますし、親としてもそう思うでしょう。

そのようなときに「遺言でそいつに財産を渡さないように書こう」と考えるかもしれませんが、親不孝者であっても遺留分という「法律で保証された最低限の相続分」は存在します。

その為下手に「財産を渡さない!」とする遺言を書いてしまうと、遺留分減殺請求をされてしまい、不動産などが共有財産になってしまいます。

共有財産となってしまった不動産は全員の合意が無ければ売却も管理運用も出来なくなるので、親不孝者の兄妹と話し合いをする必要が出てきてしまい、「とりあえず反対しよう」と言うような理由で管理運用が出来なくなることもあるのです。

「しょうがないから遺留分だけ財産を渡そう・・・」とすることが多いですが、渡した財産は当然ながら帰ってきません。

 

家族信託を活用した場合、「遺留分相当の受益権を継承させることで、財産を渡しているのだから遺留分減殺請求自体が出来なくなる」という考え方が出来ます。

まだ判例が無いので確実とはいえませんが、例えば賃貸マンションの受益権などを遺留分相当承継させることで、賃貸マンションの所有権自体は受託者のままであり管理運用は引き続き出来ますし、その後の受益者として自分の子供を設定しておくことも出来ます。

このような信託にすることで、親不孝者には遺留分相当の受益権が承継されますが、利益を受ける権利だけなので管理運用は受託者が好きなように出来ます。

そして親不孝者が亡くなった後は自分の家系に財産が帰ってくるように出来るのです。

親不孝者に財産を残さないための家族信託

 

 

贈与税を恐れずに擬似的な隠居が出来る隠居信託

旧民法であった隠居制度は、現在の民法にはありません。

しかし家族信託を活用することで、擬似的な隠居をすることが出来るのです。

もしも通常の方法で父から子供に事業承継として賃貸マンションなどの財産を引き継がせたい場合、会社であれば自社株、賃貸マンションであれば不動産を贈与する必要がありました。

その為事業継承をするということは、多額の贈与税を準備しなくてはならなくなります。

 

その為その分のお金を準備できなければ、例え父親が子供に後のことを任せたいと思っていても中々そうはできないと言うことが多くあります。

そのような場合所有権はそのまま父が持ち、代理として管理を子供に任せるというケースは少なくないでしょう。

しかしそのようにしてしまうと、父が認知症になってしまったときに「会社であれば議決権が行使できない」「賃貸マンションであれば新しい入居者と契約できなくなり大規模修繕が出来ない」といった致命的な状況になってしまいます。

事業承継すれば贈与税がのしかかり、しなければ認知症のリスクがつきまとってしまうのですが、これも家族信託でリスクヘッジすることが出来ます。

 

家族信託の場合委託者の持つ財産の名義は受託者に移りますが、その財産から受ける利益は受益者のものとなります。

そして委託者が受益者となった場合、財産の名義は変わっても財産の利益を受ける人物は変わらないことになり、贈与ではないという判断になるのです。(委託者と受益者が別人の場合は課税されてしまいます)

その為委託者兼受益者を父、受託者を子供とすることで、贈与税がかからない事業承継が出来るのです。

「全部子供に任せるのは不安・・・」という場合の為の指図権などの対応も、柔軟に行うことが出来ます。

贈与税は怖くない!家族信託で隠居を実現できるのを知っていますか?

 

 

父の再婚を応援する為の家族信託

恋愛に年齢は関係なく行えるものですが、高齢になってからの恋愛にはお互いの家族間の問題も出てきてしまうでしょう。

「再婚相手と実家で暮らすとなると、父が亡くなった後は相手方の家系に実家が流れて行っちゃうんじゃ・・・」

「こんな年齢になって結婚するっていうのはもしかして・・・」

といったような、不安や疑いを感じてしまうことも多いでしょう。

このような場合は家族信託と遺言を合わせて利用すると、不安を感じることなく心から応援することが出来るようになるかもしれません。

父の再婚を応援したいときにも活用できる家族信託

 

 

障害を持った子供を守る家族信託

親と同居している子供が障害を持っていて普段親が介助をしていた場合、

「私が死んだらどうしよう・・・」

「長男なら介助を任せられるだろうけど、長男も大変そうだからな・・・」

と不安に感じてしまうでしょう。

実際に自分が介助してて「大変だな・・・」と思っていると中々親しい人にそれを任せにくく感じてしまいますし、相手としても大変そうにしている姿を見ていて「自分に出来るかな・・・」と不安に思ってしまうでしょう。

 

父が認知症になった、亡くなった後のことについて事前によく話し合っておくだけでも違いますが、それだけでは父が認知症となり財産が凍結されてしまったり、相続発生後の遺産分割協議では障害を持つ子供に成年後見人をつけなければ遺産分割協議は出来なくなったりと、介助に必要な費用を父の財産から出すことが出来なくなってしまいます。

その為家族信託を活用することで障害を持つ子供のため、認知症や相続発生などがあっても気にせず使うことの出来る財産を準備することが出来るのです。

障害を持った子供を守る家族信託

 

 

同姓カップルが相続時に相手に財産を残せるようにするための民事信託

現在日本では同姓婚は認められておらず、もしもパートナーがなくなってしまった場合財産は一切相続することは出来ません。

婚姻関係にあれば配偶者として相続分を得ることが出来るのですが、同姓カップルや事実婚、同棲などの婚姻関係のない場合法的には家族関係はないので、なんの対策もしていない場合相続財産は受けとれないでしょう。

その為パートナーの家で同棲していた場合、持ち主であるパートナーが亡くなってしまうと家はその家族の持ち物となり、よほど良好な関係を築けていない限り追いだされてしまうような形になってしまいます。

そのようなときには民事信託を活用しパートナーを第2受益者に設定することで、自分亡き後のパートナーの生活のリスクヘッジをすることが出来るのです。

法律では結婚できない二人の財産も結び付けられる家族信託

 

 

自分の死後を任せる為の民事信託

近年結婚をせず独身で生涯を貫く方が増えています。

その場合に考えていただきたいのが、自分が亡くなったとどうなるのかということです。

子供が自分1人で両親が既に他界している場合、相続人はいないことになります。

相続人がいない場合、家庭裁判所の選任する相続財産管理人が管理することになります。

もしも事前に「私が死んだときには、葬式をしてくれ」といっていた人物がいた場合、その人は葬儀費用を立て替え、家庭裁判所に相続財産管理人を選任するよう請求して、選任された相続財産管理人に請求することになります。

 

その上請求してもすぐにその費用を出してもらえるということではなく、相続財産管理人が家庭裁判所に「立て替えた葬式費用を(亡くなった人の)財産から支払っていいですか?」というような申立書を提出し、裁判所が認めてからでなければ払われることはありません。

その為事前に話をしていた程度では、葬式をしてくれた人物が立て替えた費用を回収できるのは時間と手間がかかるのです。

親の葬儀などで1度関わっていれば分かると思いますが、葬式費用は決して安いものではなく、その費用を立て替えた状態が続くのは辛いものがあるのです。

そのようなときに民事信託を活用しておくことで、葬式費用を立て替えてもらうことなく信託財産から出してもらうことが出来るのです。

自分の死後を任せられる人がいないときの民事信託

 

 

まとめ

いかがでしょうか?

民事信託はこのように柔軟に様々な問題の対策とすることの出来る制度である事から、近年注目されるようになって来ました。

とはいえ流石に家族信託が「どのような問題にも対処できる万能の制度」というわけではなく、遺言などの他の制度も併用した方がいい場合もあります。

 

また柔軟性が高くその人の状況毎のオーダーメイドでどのような信託内容にするのかを決める必要があります。

もしも信託内容に不備があると、いざと言うときに機能しなかったり、途中で信託が終了してしまったりとトラブルの原因にもなってしまいます。

家族信託はまだ普及し始めたばかりで、弁護士や司法書士でもあまり詳しくないこともあります。

 

家族信託普及協会の家族信託コーディネーターであれば民事信託について詳しく理解しているので、状況に応じた適切な信託契約を設計することが出来ます。

相続サロン多摩相談センターでは、家族信託普及協会の家族信託コーディネーターが在籍しています。

家族信託についてのしっかりとした知識を持ったコーディネーターが、どのような家族信託にするといいのかを提案させていただきますので、是非ご相談ください。

相続サロン多摩相談センターへの相談はこちらからどうぞ

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