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家族信託を使った認知症対策を自分で行う為にどんな手続きが必要?

 2017/04/03 家族信託 家族信託とは 家族信託の手続き
この記事は約 14 分で読めます。
家族信託って言うくらいだし、自分で手続きできないものかな?
自分で出来るなら、家族信託の手続きやってしまおうかな

家族信託は簡単に言ってしまうと民事信託を家族でおこなうものです。

家族信託は信託銀行などが不特定多数を対象に営利目的で行う商事信託と違い、報酬を発生させないようにも設計できます。

その為「信託を利用してみたいけど費用をあまりかけたくない…」というときにも利用可能です。

当然報酬を発生させる設計にも出来ます。

家族間で信託を行う場合、家族信託での報酬は生前贈与とは別口の財産を移す手段にもなります。

 

家族信託は、これまで委任契約任意後見制度死後委任契約遺言のような複数の契約をしなければ不可能であった相続対策が備わっています。

ここで注意していただきたいのが、完全に同じ機能があるわけではなく、遺言や成年後見制度にしかないメリットも存在するということです。

その為家族信託と遺言を組み合わせる、といった方法が必要になることがあります。

そのような家族信託だけではなく、他の制度の利用も考えた方がいい場合などはこちらで紹介しています。

家族信託が万能な制度だと思っていませんか?

 

家族信託は契約内容も柔軟に設計できるので

  • 遺言の代わり
  • 自分亡き後の障害を持つ子供や、ペットのその後を保護する
  • 子供への相続だけでなく孫やひ孫の相続への干渉

といったことも出来ます。

この家族信託を設計するときに家族信託コーディネーターのような民事信託について造詣の深い専門家に依頼をし、設計、及びその後のサポートを受けるのが一般的ですが、実はやろうと思えば個人で行うことが可能です。

とはいえ家族信託の設計が適切でなければ、いざというときにトラブルに発展してしまう危険性が高まります。

それだけでなく、手続きの段階でもトラブルが起きてしまうことが多いのです。

それでも自分で家族信託の契約をやってみたい!

という方に向けて、家族信託に必要なものの手続きはどのようなものがあるのか、何故専門家に依頼した方がいいのかについて、ご紹介します。

 

 

家族信託とは

家族信託は信頼できる人物に自分の財産を信じて託す民事信託で、家族に財産を信託することが多いことからそのように呼ばれるようになりました。

民事信託の基礎となる役割は委託者、受託者、受益者、及び信託される財産である信託財産があります。

委託者:自分の財産を信託財産として、信頼できる人物を受託者として信託する人

受託者:委託者から信託財産を信託されて、契約に沿った管理運用をする人

受益者:信託財産からの利益を受ける人

信託財産:委託者から受託者に信託される財産で、名義は受託者に、利益は受益者のものとなる

受託者、受益者は複数設定でき、何代分でも設定できるので数代先の相続にも干渉できるようになります。

 

※クリックで拡大

  • 信託財産を賃貸アパート
  • 委託者を父
  • 受託者を長男
  • 当初受益者を父
  • 第二受益者を長男・次男

とし、アパートの管理運用を長男に託す家族信託を締結したとします。

信託財産の名義は長男に、受益権は父のままとなるので、財産は贈与されたことにならず贈与税はかかりません。

当初受益者を父、第二受益者を受託者でもある長男(1/2)及び次男(1/2)、第三受益者兼呼び受託者を長男子供にした場合、父亡き後名義は共有にならず長男のもののままとなります。

そのため長男の意思だけで、契約に沿った(契約で売却を設定しなければ売却は出来ないなど)管理運用が出来ます。

 

遺言で賃貸アパートを長男に相続させようとした場合、それ以外の財産が少ないと次男は不平等を訴える可能性もありますが、受益権を継承していれば不満はおきにくいでしょう。

もしも次男に子供がおらず通常の相続では次男の嫁の家系に財産が流れてしまうなど、被相続人にとって好ましくない状況の不安があったとします。

その場合ても第三受益権として直径の孫(長男の子供)を設定しておけば、次男に継承された受益権を自分の家系に戻すということも出来ます。

数代先の相続をコントロールすることはこれまでの民法では不可能なことで、この点でも家族信託は注目されています。

 

 

家族信託で必要なもの

この家族信託を契約する際には下記に記すようなものが必要になってきます。

  • 信託契約書
  • 信託登記
  • 信託口座など

 

信託契約書

信託契約を結ぶので、やはり契約書は必要になります。

この契約書は公正証書が好ましいとされていますが、自分たちで作成すること自体は出来ます。

しかしその場合には

  1. 契約書の不備
  2. 信託契約書の正当性

などの点がリスクとなります。

 

 

1.契約書の不備

公正証書は本人が想いを話し、その内容を元に公証人が公正証書を作成します。

その為公正証書に書類の不備があることはほぼありません。

しかし個人で作成する書類の場合は、自分で考えた契約内容を自分で契約書としてまとめなければならなくなります。

家族信託の契約書は決められた書式は存在せず、「これは記載してください」という必要事項が存在するだけです。

 

もしも必要事項を書き損ねた、間違えて書いてしまったという場合、信託契約書は無効になってしまいます。

信託契約書が無効になってしまえば、相続発生時など契約内容の主張をしても効力はありません。

役所などに出す書類は受付の段階で不備がないか確認するので、「書類作成から申し込み」の段階で不備に気付けます。

しかし作った段階では提出しない信託契約書は、「効力を主張するとき」に初めて確認することになります。

その為書類の不備に気がついたときは、既に手遅れになるリスクと隣り合わせになっているのです。

 

 

2.信託契約書の正当性

更に書類の不備なくしっかり書けていたとしても、契約書の正当性を疑われることもあります。

次男
それが本当に父さんの遺したものという証拠はあるのか!
次男
あんたが都合よく書いただけだろう!
次男
父さんが認知症になったのはそのあたりなんじゃないか!?だとしたら無効だろう!

父が書いた契約書だとしても、それを証明することが出来なければ意味がありません。

しかし相続発生時には、父に「それ、俺が書いたものだよ」と証明してもらうわけにも行きません。

 

また本人が書いたものだとしても、認知症の疑いをかけられてしまった場合「認知症になる前に書いた書類」ということを証明することは難しいでしょう。

例え認知症となる前の日付があったとしても、「その日にちが嘘っぱちだ!」と言われてしまえば、その証明をすることは難しいでしょう。

また、信託契約を快く思わない誰かが信託契約書を処分してしまった場合などの問題も出てきてしまいます。

公正証書で信託契約書を作成していた場合原本は公証役場にあり、たとえ誰かが手元の信託契約書を破いて処分してしまったとしても再発行してもらえます。

 

これらは自分で書いた遺言書である自筆証書遺言でも同じことが言えます。

実際に自筆証書遺言の無効を主張した裁判は行われていますし、記載内容に誤りがあるなどで無効になることも多くあります。

公正証書で書いていれば書式や日付は問題になりません。

認知症に関して深く追求されることもあるかもしれませんが、公証人と話をして作成しているので問題となるケースは少なくなります。

 

 

このような「依頼者の想いが詰まった信託契約書」が無効にされてしまうケースが少なくないことを理解しているからこそ、専門家に信託契約の設計を依頼すると、公正証書での信託契約書の作成を提案されることが一般化してきているのです。

もちろん自分で作成する私文書で問題のない可能性の高いケースでは、私文書で進めることもあるでしょう。

内容は証明しないけれども「この日に既にこの書類は存在していた」ということは証明する、確定日付というものを取得することで済ませることもあるでしょう。

「本人が関与して作成されたこと、書類に不備がないことは公証人が確認した」という証明になる私文書認証で済ませて、公正証書にはしないということもあります。

私文書認証をすれば、

  • 本人が関わって書類を作ったこと
  • 文章の不備などを確認し無効、違法にはならない

ということを証明してくれます。

ただ内容に関しては証明してくれないということ、公正証書と異なり公証役場に原本がないので、契約書を紛失してしまう危険性があることは注意しましょう。

 

 

信託登記

信託財産に不動産がある場合、名義が委託者から受託者に移るので信託登記が必要になります。

この信託登記も個人で行うこと自体は制度上不可能ではないのですが、信託内容を簡潔にピックアップしたものでる信託目録も登記する必要があります。

信託内容のどの部分を信託目録にするかなど、信託目録の作成は司法書士であっても経験が浅ければ迷ってしまいます。

そのため信託登記は個人で行うのは難しく、やはり司法書士に依頼する場合がほとんどでしょう。

 

 

信託口座など

  • 信託財産に現金がある
  • 賃貸物件など収益が出る財産の収益

などを信託財産とする場合、「委託者父 受託者長男 信託口」というような民事信託口座を作る必要があります。

信託財産からの収益などは、他にも税務署に届ける必要も出てきます。

この信託口座を開くときに、民事信託について理解のある金融機関であればスムーズに口座を開設できるでしょう。

しかし民事信託は普及しだしてからまだ間もなく、金融機関に浸透していないのです。

民事信託は信託銀行などが行う商事信託とは別物なのですが、金融機関は商事信託の方が理解は深く、民事信託と商事信託をごちゃ混ぜにしてしまっているところが多いのです。

 

そのような民事信託と商事信託をごちゃ混ぜにしてしまっている、こちらとしては「知識不足」としか表現が出来ない金融機関に当たってしまったら大変です。

担当者に民事信託と商事信託の違いを説明をし、理解させなければ門前払いをされてしまうからです。

更に、地道にしっかりと説明をしてようやく口座を開設したとしても、信託口座について誤認されたまま「信託口という書かれ方をした普通口座」を開設されてしまうこともあります。

そうなってしまうと相続開始時や認知症などで本人の口座が凍結されてしまうときに、信託口座までも凍結されてしまうということもあります。

 

そうなってしまったときにも解決策としては「地道に交渉」以外にはないので、こうなったときも骨が折れてしまいます…

あいまいな知識の人物がこのような法律で認められていることを理解していない、最新の動向を勉強していないような銀行で口座を開設しようとするのは難易度が高いのです。

理解のある銀行を見つけ出す(銀行に理解があっても担当者に理解があるとは限りませんが)ことも骨が折れます。

家族信託よりも歴史の長い遺言や任意後見制度などの制度であっても、未だに受け付けることに抵抗を示す銀行もあるので、家族信託でもそのようなことになるかもしれないのです。

 

 

家族信託の手続きを自分で行う上でのハードル

このような家族信託で必要な書類などの手続きを進める為には、高いハードルがあります。

信託口座を開設するときに知識のない銀行の担当者を引いてしまった場合にも、信託契約書を作る為の書式などに関してももちろん民事信託についての深い知識が必要になります。

しかしここまででは、「公正証書で信託契約書を作って、銀行をいくつも巡ってみれば自分でもなんとかなりそうかも?」となるかもしれません。

しかし家族信託を成功させる上で最も重要なのは、実は信託契約の手続きを進めることではなく、信託契約を設計するところなのです。

 

 

信託設計に問題があるとトラブルになる

家で考えていただくと分かりやすいかもしれません。

家を作るときに腕の良い大工さんに依頼をすれば良い家が建つかというと、それだけでは上手くいきません。

大工さんは決められた設計図に沿って自分の持つ技術をフルに活用して良い家を建てようとしてくれます。

しかしもしもその家の玄関が2階になっていて階段がついていなかったり、設計図上階段がないはずなのに高床式になっていたらいかがでしょうか?

 

設計図も作れる大工さんであれば修正してくれるでしょうし、「これじゃ家にならないよ」と忠告してくれるでしょう。

しかし信託契約書を公正証書にしても、公証人が民事信託のことを理解して「これには問題がある」と教えてくれるとは限りません。

またあなたの望む信託はあなたにしか分からないので、おそらく修正してくれる人はいないでしょう。

 

 

オーダーメイド性の高い信託契約書

家族信託は

「息子の嫁の家系に財産は残したくない!」

「自分亡き後の障害のある子供のことが心配…」

「次男にだけは財産を遺したくない!」

というような、その人毎の目的に合わせたオーダーメイドで設計する必要があります。

つまり「どこかから信託契約書の見本を受け取り、その見本の通りに書類を作る」ということが難しいのです。

実際の信託契約書をどこかから入手したとしても、その信託契約の内容があなたの作りたいものと一致しているとは限りません。

 

例えば契約内容に不動産の売却が記載されていれば、受託者は適切だと判断すればその不動産を売却することが出来るようになります。

しかし元々「自分が認知症になったら、信託財産である実家を売却して施設に入居させてね」ということを言っていたとしても、信託契約の内容に売却できる旨を記載していなければ売却は出来ません。

 

他にも家族信託の設計を間違ってしまった際に起きてしまう例としては

例1:委託者当初受益者父、受託者兼第二受益者長男、第三受益者長男の子供とした信託設計

民事信託では、受託者と受益者が完全に同一となって1年間経過してしまうと信託契約が解除されてしまうという決まりがあります。

その為第二受益者、第三受益者を設計していても、長男が受益者となって1年以内に第三受益者に継承されない限り、信託が解除されてしまいます。

 

例2:委託者兼当初受益者長男、受託者父、第二受益者次男という信託設計

受託者である父が長男よりも先に死亡してしまう場合、その時点で信託契約が解除されてしまうので、信託財産は長男の財産に戻り次男には法定相続分の財産しか相続されなくなってしまいます。

 

 

他にも失敗とはいえないのですが、法定相続人の遺留分を侵害してしまう信託設計は注意が必要です。

家族信託は普及してから日が浅いので

  • 信託財産が遺留分を侵害するのか
  • 生命保険などと同様に遺留分を侵害しないのか

についてはまだ判例がありません。

遺留分を侵害する家族信託を設計して遺留分減殺請求をされた場合に、裁判所でどう判断されるかはまだ分かっていないのです。

財産を渡したくない相続人に対して、遺留分を侵害せず受益権だけ相続させ、その相続人が死亡したときに自分達の家系に戻すことの出来る信託設計も、民事信託への理解が深ければ設計することも可能となります。

 

 

このように、家族信託の契約を個人だけで結ぼうとするには、適切な設計が出来るのか、適切な契約書が作れるのか、理解のない金融機関を説得できるのかなどの様々な障害があります。

その為、家族信託コーディネーターのような民事信託について造詣の深い専門家に依頼をすることが一般化しているのです。

家族信託コーディネーターは、家族信託普及協会から民事信託について研修を終えて民事信託に詳しい知識を持っている専門家です。

相続サロン多摩相談センターには家族信託普及協会の家族信託コーディネーターが在籍していますので、家族信託について興味があれば、是非ご相談ください。

相続サロン多摩相談センターへの相談はこちらからどうぞ

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