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家族信託ってなに?~新しい相続対策~

 2017/07/10 家族信託 家族信託とは 家族信託の手続き 家族信託の費用
この記事は約 27 分で読めます。

NHKで紹介されるなど、最近になって家族信託が話題になるようになりました。

家族信託は家族などの身近で信頼できる人同士で行われる民事信託で、信託銀行などが不特定多数を相手に営利目的で行う商事信託とは異なります。

家族信託は成年後見制度や遺言書の代わりとして、又は併用することで、被相続人(亡くなった方)が生前「自分の財産はこう相続されて欲しい」、と望んだ形にすることが出来る制度です。

 

平成19年の法改正の後に広まったので、家族信託はようやく弁護士や司法書士に浸透し始めた段階です。

そのため未だに商事信託と家族信託(民事信託)が混合して間違って理解してたり、あまり知らない…という専門家も多くいます。

当然ですが、専門家以上に一般家庭には浸透していません。。

しかし高齢化の進む現代日本にとって家族信託は優秀な制度ですから、これからドンドン浸透していくでしょう。

 

家族信託の特徴はなんといってもその柔軟性です。

家族信託は

  • 父の認知症対策として
  • 自分が亡くなった後に障害を持つ子供を守る為
  • 自分の財産が息子の嫁の家系に流れないように

などその人の希望に合わせて設計するので、柔軟性は高くなっています。

今回はこの家族信託について紹介し、どのような手続きが必要なのかをお話させていただきます。

 

 

家族信託とは何か?

信託とは?

信託を一言でいうと「自分の財産を信頼できる人に信じて託す」ことです。

このときに

  • 託す人を委託者
  • 託される人を受託者
  • 託される財産を信託財産
  • 信託財産から利益を得る人を受益者

という用語を用います。

受託者は信託財産を託されますが、その財産を好き勝手に管理運用することは出来ません。

受託者は受益者の利益のために、信託契約に沿った信託財産の管理運用処分をする義務があるのです。

この受託者が負う義務を、「忠実義務」といいます。

 

 

家族信託(民事信託)と商事信託は何が違う?

信託と聞いて最初に思い浮かべるのは何でしょう。

CMなどでもよく放送されているので、思い浮かべるのは投資信託のような信託銀行が行う商事信託ではありませんか?

商事信託は受託者を信託銀行などとし、不特定多数に対して営利目的で行います。

商事信託の場合は国から許可を受けていないと行うことは出来ず、信託銀行は預貯金などしか信託できないといった制限があります。

 

この商事信託に対して、国の許可がない一般人でも非営利目的で特定少数に対してのみ信託出来るのが、民事信託です。

民事信託は当事者間での契約なので、信託財産は信託銀行では信託出来ないような実家や賃貸マンションといった、不動産など幅広い財産を信託財産とすることが出来ます。

この民事信託の中でも、家族のために家族同士で行われる民事信託を家族信託とよんでいます。

家族信託は元気な内から財産を託すので、相続対策としてだけでなく認知症対策としても有効です。

信託の性質上制限はつきますが、名義は受託者になるので、委託者の判断能力がなくなってしまった後も信託財産の管理運用が出来るようになります。

 

 

このような人に家族信託は有効です

家族信託はその特性から

  • 認知症などの判断能力の低下に備えたい
  • 事業承継に対してしっかりと対策をしたい
  • 遺言書や成年後見制度以外の相続対策を検討したい
  • 二次相続・三次相続にも関与したい

という想いがある方に有効な制度となります。

 

 

家族信託を行う場合のメリットとデメリット

家族信託には多くのメリットがありますが、注意しなければならないデメリットも存在します。

 

家族信託のメリット

  1. 元気なときから柔軟な財産管理の実現が可能
  2. 親の財産の財産管理に親・成年後見人の合意が必須ではなくなる
  3. 遺言書では出来ない二次相続・三次相続への関与が可能
  4. 贈与に頼らず事業承継が可能
  5. 契約時から財産管理を任せることも出来る
  6. オーダーメイドの契約が作れる
  7. 本人の財産でなくなるので詐欺被害にあいにくい
  8. 倒産隔離機能もある
  9. 信託財産も柔軟に選択できる
  10. 相続時の相続財産の凍結・相続争いのリスク軽減
  11. 共有不動産の問題解決

 

1.元気なときから柔軟な財産管理の実現が可能

成年後見制度や遺言書などは、判断能力がなくなってから・相続発生時というような「効力が発生するまでの空白の期間」があります。

家族信託では契約した段階で受託者が信託財産を管理できますから、委託者からしっかりと事業承継をしてもらえます。

同様に委託者が認知症になっても、相続が発生しても関係なく財産管理をすることが出来ます。

なお受託者が管理するといっても、不安がある場合は指図権などの工夫をすることで「強制的に」元気な内は委託者が管理運用に関わることができるようになります。

 

 

2.親の財産の財産管理に親・成年後見人の合意が必須ではなくなる

人によってはこの名義が変わる点を不安に感じるかと思いますが、管理運用をするうえで名義はとても重要になります。

売買契約や定期解約などの法律行為は名義人でなければ出来ない以上、名義が委託者のままで委託者の意思能力がなくなってしまうと、信託財産の管理運用がままならなくなります。

  • 親が認知症になった後も賃貸マンションの管理運用をしたい
  • 親が介護施設に入居すると空き家になってしまう実家を売却して、介護費用に充てたい

といったことを可能にするためには、信託財産の名義は受託者になければならないのです。

 

 

3.遺言書では出来ない二次相続・三次相続への関与が可能

遺言書で遺産分割を指定する場合、父から子に相続された財産は子供の財産となります。

その為その後子供が財産をどう扱おうと子供の勝手となりますし、子供の相続時に誰に財産が引き継がれるかも父は関与できません。

その為遺言書で「実家は長男に相続させ、長男死亡時には長男の嫁ではなく次男に相続させる」というようなことを書いても、有効となるのは「実家を長男に相続させる」という部分のみとなります。

家族信託であれば当初受益者を父、第二受益者を長男、第三受益者を次男という設定にすれば、大切な実家が子供の嫁の家系に流れてしまうことを防ぐことが出来るのです。

 

 

4.贈与に頼らず事業承継が可能

賃貸マンションなどの不動産や株式を子供に事業承継しようと生前贈与を考えた場合

  • まだ子供には早いのではないか
  • 贈与税の負担が重過ぎる
  • 子供に財産を贈与した後に態度が急変したらどうしよう

といったような不安を感じ事業承継に二の足を踏んでしまうということがあるでしょう。

 

家族信託の場合、委託者が当初受益者となっている場合は

「財産から利益を受ける人物は変わっていない」

ということで贈与にはならず、贈与税もかかりません。

更に契約内容に工夫をすれば

  • 父が指図権者となることで元気な内は財産管理に親が強制的に介入
  • 受益者指定権者を設定することで、家族信託締結後態度が急変し好き勝手するようになった場合に子供に受益権が承継されないよう変更

ということが出来ます。

 

 

5.契約時から財産管理を任せることも出来る

会社などで引継ぎの経験があれば、引継ぎの重要性はわかるでしょう。

しかし賃貸マンションを相続した子供は、基本的に引継ぎをせず管理運用をしなければなりません。

特にこれまで賃貸マンションの経営に一切関わっていなければ、管理運用の難易度は高くなってしまうでしょう。

家族信託であれば、父は元気な状態の内に子供に賃貸オーナーとしての事業承継を行うことが出来ます。

そのため子供も、賃貸オーナーとしての心構えを持った状態で相続することが出来るのです。

 

 

6.オーダーメイドの契約が作れる

家族信託には、銀行などの提出書類のような決まったフォーマットは存在しません。

必須項目はありますが、契約内容に関してはそれぞれの状況に合わせてオーダーメイドにすることが出来るのです。

その為信託契約によって

  • 擬似的な家督相続を実現する家族信託
  • 擬似的な隠居を可能にする家族信託
  • 財産を渡したくない相手がいる場合の家族信託
  • 自分亡き後も障害を持つ子供を守る為の家族信託

といったような、あなたの望む結果に近付ける家族信託をオーダーメイドすることが出来るのです。

 

 

 

7.本人の財産でなくなるので詐欺被害にあいにくい

元々判断能力の無い人物は契約行為や法律行為を行うことは出来ませんが、そそのかされた売買契約などを解除することは大変です。

実家や賃貸マンションなどを家族信託で信託財産にしておけば、名義は受託者なのでそもそも売却の手続きを行うことが出来なくなります。

その為、信託財産の運用を阻害するような詐欺の被害には遭いにくくすることができるのです。

 

 

8.倒産隔離機能もある

信託財産は扱いが特殊で、名義は受託者でも委託者・受託者のどちらにとっても固有の財産ではありません。
そのため委託者か受託者のどちらが多額の借金をしてしまっても、「信託財産が差し押さえされてしまう」ということにはなりません。

これを「倒産隔離機能」といいます。

とはいえ最初から「大事な財産だけ信託して借金をしてしまえ!」と考えている場合、債権者の権利を害する詐害信託として取り消しになる可能性があります。

そもそも信託財産は差し押さえられなくても、受益権は差し押さえることが出来ます。

その為この隔離機能については、あまり深く考えない方がいいでしょう。

 

 

9.信託財産も柔軟に選択できる

信託銀行の投資信託(商事信託)は現金のみで、運用方法も決まっているなどの制限があるものがほとんどです。

しかし家族信託であれば実家や自社株のような、商事信託では中々信託財産に出来ないものに関しても柔軟に信託財産とすることが出来ます。

 

 

10.相続時の相続財産の凍結・相続争いのリスク軽減

相続財産は遺言書がなければ遺産分割協議書が完成するまでは共有財産であり、ほぼ凍結されているようなものです。

つまり遺産分割協議で争った場合、賃貸マンションなどの資産運用は絶望的となってしまいます。

しかし家族信託の場合は受託者名義となっているので、遺産分割協議の最中であっても凍結はされず、遺産分割の対象とはならないので問題なく管理運用をすることが出来ます。

 

 

11.共有不動産の問題解決

祖父の代の遺産分割を行っていないなどの理由で、既に共有財産となっている賃貸マンションなどの不動産がある場合リフォームなどの行為のたびに持分を持つ全員の合意が必要となり手間が非常にかかります。

このような場合であっても1人を受託者として信託することによって、名義人が1人となり財産管理がしやすくなります。

 

 

家族信託にはこのような様々なメリットがあるので、今後利用者は増えていくことが予想されています。

 

 

家族信託のデメリット

  1. 家族信託は万能ではなく、成年後見制度や遺言書にしか出来ないこともある
  2. 受託者がトラブルの原因となる危険性もある
  3. 節税効果を主とした相続対策にはならない
  4. 遺留分を無視した家族信託では遺留分減殺請求の対象となる可能性も…
  5. オーダーメイドで信託内容を作成するので、しっかりとした知識がないと作成は難しい

 

1.家族信託は万能ではなく、成年後見制度や遺言書にしか出来ないこともある

家族信託には成年後見制度、遺言書の機能も備えていますが、全ての機能を持つわけではありません。

家族信託には、成年後見制度の特徴の一つである身上監護が備わっていません。

成年後見制度における身上監護は、本人の身の回りの世話、怪我や病気などをしたときの治療・療養・介護等に関する法律行為を行う義務のことを指します。

成年後見人本人が身の回りの世話や介護などをする必要はありませんが、訪問介護などの手続きなどを行わなければなりません。

 

家族信託では似たようなものを契約内容に含めることは出来ますが、身上監護そのものを盛り込むことは出来ません。

介護サービスを受ける中で、身上監護の義務があるか無いかで手続きのやりやすさが変わってくるのです。

また家族信託での遺言機能は信託財産にのみ適用されるのものですから、信託財産以外のものについては別に遺言を作成した方がいい場合もあります。

 

この財産だけは妻に相続させたいけど、それ以外の財産は子供同士の話し合いで決めて欲しい

というような場合であれば家族信託だけでも問題ありませんが、争いを回避する為に全ての財産の行き先を決めておきたいという場合には遺言も残すようにしましょう。

家族信託だけで済ませようと全ての財産を信託財産としてしまうと委託者固有の財産が全てなくなり、普段の生活で必要なお金なども受託者に任せることになってしまうので注意しましょう。

 

 

2.受託者がトラブルの原因となる危険性もある

自分の財産を任せる受託者ですから、本当に信頼できる人物を設定する必要があります。

信託監督人を設定するなどで対策をとることも出来ますし、信託契約によって監視を強めることも出来ます。

しかしあまり監視の目を強めすぎると、負担が重くなりすぎて受託者がまいってしまいます。

また子供同士の仲が悪い場合「なんであいつに任せるんだ!」と、受託者自身が争いの種となってしまうこともあります。

 

 

3.節税効果を主とした相続対策にはならない

相続対策と聞いて、真っ先に節税を思い浮かべる方も多いでしょう。

しかし家族信託の場合、受益者が亡くなって次の受益者に受益権が承継されるときに相続税の課税対象になるなど、節税効果を主な目的とした制度ではありません。

家族信託では「父が委託者兼当初受益者、子供が受託者」というような、委託者=受託者という場合贈与税の課税対象とはなりません。

 

しかしこれは「利益を受ける人物が変わっていない=財産は移動していない」という考えでのことです。

その為「父が委託者で子供が受託者、母が受益者」というような、最初から委託者と受託者が異なる場合や、第二受益者を子供にして相続時に受益権が承継された場合、贈与税や相続税の課税対象となります。

信託内容の設計の仕方によっては節税効果を望める場合もありますが、基本的には争いに発展しないようにし、相続そのもののクオリティを高める制度です。

 

 

4.遺留分を無視した家族信託では遺留分減殺請求の対象となる可能性も…

子供が3人いる中で「長男に全ての財産を相続させる」という遺言を作成した場合、長男以外の子供の遺留分を侵害してしまうので遺留分減殺請求の対象となります。

これは家族信託でも同様で、全ての財産を信託財産として「第二受益者は長男とする」という信託契約にしたとしても、遺留分減殺請求の対象となると考えられています。

信託法が改正されてからまだ日が浅いため、民事信託で遺留分を侵害した場合の判例はありません。
そのためどの専門家も断定は出来ませんが、「遺留分減殺請求の対象となるだろう」というのが一般的な考え方になっています。

 

ただ父から子への一時相続では遺留分減殺請求の対象となったとしても、

「子から孫への二次相続のときは遺留分減殺請求の対象とならないのではないか」

という考え方にもなっています。

この部分を利用した「財産を渡したくない子供に、最終的に財産が残らない家族信託」なども設計できますので、興味がありましたらご相談ください。

 

 

5.オーダーメイドで信託内容を作成するので、しっかりとした知識がないと作成は難しい

家族信託のメリットにその人の状況に合わせた、オーダーメイドの信託内容にすることが出来るというものがありますが、これはそのままデメリットにもなります。

決まったフォーマットの書類であれば、書類の項目に沿って記載することで知識がなくても書類を完成させることが出来ます。

しかし定まったフォーマットのない家族信託では、そうはいかないのです。

現在インターネット上には「家族信託の書式」というものをダウンロードできるサイトがありますが、その書式が想定する状況そのものでない限りはそのまま使用しないほうがいいでしょう。

 

実家信託であっても

「空き家になった段階で売却して介護施設の費用に充ててほしい」

という場合、

「代々受け継いだ実家を自分の家系に残していきたい」

という場合では契約内容は異なります。

 

もしも

「実家を売却して介護費用に充てたいから実家信託をしたい」

という人が、ネットで見つけた

「受け継いだ実家を守り続けるための実家信託」

の書式を使用してしまったらどうなるでしょう。

ネットの書式は当然実家の売却は想定していないので実家を売却して介護費用にすることは出来ず、空き家の維持管理費用はかかるので家族信託としては大失敗になります。

 

また書式を作成した人物が商事信託と民事信託を混合していた場合、その書類を使用するのは危険です。

商事信託の場合受託者は認可を受けた営利目的の信託会社であり、定期的な報告などの受託者を縛る項目が多くあります。

そのため専門家が作成する家族信託の場合はA4用紙4枚程度で収まるのですが、商事信託の書式を参考にするなどしてしまう場合はこれよりも枚数が多くなってしまいます。

これをそのまま使用してしまうと受託者の負担が重い家族信託となってしまうので、家族の絆に影響が出てくる危険性もあります。

 

 

家族信託にはこのようなデメリットも存在します。

家族信託自体は自分で作成することも可能なのですが、オーダーメイドで契約内容を作成しなければならないということで、多くの場合は専門家に依頼されています。

遺言の場合中を読まれるのは本人が亡くなった後ですので、自分の相続対策で家族が争う争族になってしまったとしても本人が知ることはありません。

しかし家族信託の場合、元気な内に相続対策が原因で争族になってしまう事態にもなりかねません。

家族の状況と家族信託のデメリットを、しっかりと把握しておきましょう。

 

 

家族信託を作成するときに考えるべきこと

家族信託の契約内容の作成を専門家に依頼しようとした場合でも、事前に考えておいた方がいいこともあります。

専門家に依頼する場合でもあなたの状況や、家族信託で何をしたいのかなどのヒアリングはしっかり行われます。

そうしなければ、あなたにとって適切な家族信託を作成することは出来ないからです。

考える前に相談をした場合、どうしたいかを専門家と一緒に考えるところから始めなければならないので、少々時間がかかってしまうのです。

下記の事柄を事前に考えておけば専門家に依頼する場合にもスムーズに話が進みますし、自身で作成するときにはほぼ必須と考えていいでしょう。

 

 

何を実現する為の家族信託ですか?

家族信託は家族が実現させたい目的に合わせてオーダーメイドするので、家族信託で実現する目的が重要になります。

この目的があやふやであったり、目的に合わせたオーダーメイドが出来ていない家族信託は、効果が薄いだけでなく悪影響を及ぼしてしまう恐れもあるのです。

 

その為

  • 空き家になった実家を売却して介護費用に充てたい
  • 事業承継として賃貸マンションの管理を任せて、今後も発展させていきたい
  • 認知症の備えはしたいが、まだアパート経営には関与するか、続けていきたい
  • 障害を持つ子供の将来が心配で、元気な内に対策をしておきたい
  • 認知症になってしまうことで自分が経営している会社に悪影響が出ることは防ぎたい
  • 「この財産だけは自分の家系に引き継いで欲しい」というような相続先の希望がある
  • 自分が亡くなることで争族になってしまうことは避けたい
  • 現時点で共有財産になっている不動産を、まともに管理運用できるようにしたい

といった実現させたいことや信託の目的をしっかりと考えて決めましょう。

決めた目的に合わせたオーダーメイドの信託を作成することで、家族の望む未来に近づける家族信託とすることが出来るのです。

 

 

何を信託財産としますか?

家族信託で実現したい目的が

「実家を自分の家系に残したい」

「実家を売却か民泊などに活用し介護費用に充てたい」

という場合、信託財産は実家と実家を管理するための現金となるでしょう。

このように、何を信託財産とするかを目的に合わせて決めましょう。

このとき実家のような「財産から利益は出ないけど維持管理費は発生する」という場合には、維持管理費も信託財産とした方がいいでしょう。

 

誰に信託しますか?

何を目的として、どの財産を信託財産とするかを決めたら、次は誰に信託するかを考えます。

家族信託は、委託者と受託者に信頼関係があることが前提です。

  • 信頼はしているけど流されやすい性格で心配
  • 財産の管理に関しては素人だから補佐をつけたい
  • 子供同士の仲が良くないから、長男に任せる場合でも第三者に監視してもらい次男にも安心してもらいたい

という信頼は出来るけど不安な部分がある場合、信託監督人などの設定も考えたほうがいいでしょう。

 

誰を受託者にするかということを考えることは、信託内容を定める上でも重要な要素となります。

もしも信頼できる家族がいない、家族同士の仲が悪すぎて適切な受託者が見つからないという場合であれば別の対策を模索するか、商事信託を検討するという選択肢もあります。

 

 

どんな信託内容にしますか?

何を目的とした家族信託か、信託財産は何にするか、誰に信託をするのかを決めたら、いよいよ信託内容を考えます。

とはいえこれまで決めたことを箇条書きにしてみると、契約内容の本筋自体は簡単に出てきます。

 

例えば

委託者:父

目的:空き家になる実家を売却してそこから介護費用を出す

信託する財産:実家と維持管理用の現金

信託する相手:よく世話をしてくれる長男

という状況であれば、そのまま

信託内容:父が元気な内は実家で暮らし、要介護認定を受けて介護施設に入居することになったときに実家を売却して介護費用に充てる。

父の死後は信託契約を解除し、残余財産は相続財産に加え相続させる。

というようなものが考え付きます。

 

実際には条項という形で作成していくのでここまで短いものにはなりませんが、条項などの契約書の形にまとめるのは、専門家でなければ非常に難しくなってしまいます。

ここまで考えていただければ、専門家は契約書を作りやすくなるでしょう。

 

 

家族信託の手続きとかかる費用

家族信託をやってみようと考えたときに、気になるのは手続きの流れやかかる費用でしょう。

特に「自分で家族信託を作成してみよう!」と思った場合であれば、手続きは気になりますよね。

 

 

家族信託の手続き方法

委託者と受託者が信託契約書で契約締結させる

家族信託を行う際、基本となるのは委託者と受託者が信託契約書で契約を結ぶことです。

このときの信託契約書の主流は公正証書ですが、必ずしも公正証書で行わなければならないわけではありません。

しかし実際に契約書に沿って銀行で信託口口座を作成しようとするときなどで、公正証書でなければ話を進めることが難しい場合がほとんどです。

 

現在民事信託は銀行ではあまり理解が広まっていないので、多くの場合は制度の説明をして銀行を説得し、信託口口座を作らなければならなくなってしまいます。

この説得も家族信託を自身で行うことが難しい理由の一つです。

信託口口座を作成できるよう銀行を説得するときに、信託契約書を公正証書で作っているか否かによって交渉の難易度が大きく変わってきます。

 

そのため、「信託契約書を公正証書にしなければならないというわけではないけど、公正証書にすることを勧めています」という専門家が多いのです。

また公正証書は公証役場に原本が保管され手元に正本がある状態になるので、もしも契約書を紛失しても公証役場で正本や謄本を発行してもらえます。

 

 

遺言で信託契約を成立させる

信託契約書で委託者と受託者の合意の下信託契約を結ぶ以外にも、遺言書で委託者が亡くなった時に信託契約が成立するようにすることも出来ます。

この場合でも公正証書でなくても構いませんが、自筆証書遺言の場合は民法で自筆証書遺言の書き方が決められています。

もしも亡くなってから遺言の書式に間違いがあることが分かった場合、信託契約が無効となるケースもありますので注意しましょう。

遺言で信託契約を成立させる場合、家族信託の長所の一つである認知症対策にはなりません。
また受託者に対して事前に説明をしなければ、受託者となることを拒否されてしまうこともあります。

 

 

自己信託の場合信託宣言

委託者が受益者になることは良くありますが、状況によっては委託者兼受託者となる自己信託を行うこともあります。

このような信託を行う場合は、信託宣言を行うことになります。

しかし委託者=受託者という自己信託は、1年経過すると自動で解除されてしまう(1年ルールと呼ばれている)などの問題があります。

 

家族信託にかかる費用

家族信託の契約書を自身で作成する場合は、契約書作成には実費程度で特殊な費用はかかりません。

しかし信託契約書を公正証書で作成したり、信託設計を専門家に依頼すると費用がかかります。

 

公正証書は財産の評価額によって手数料が異なる

信託財産の評価額 手数料
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 11,000円
1,000万円以下 17,000円
3,000万円以下 23,000円
5,000万円以下 29,000円
1億円以下 43,000円
3億円以下 43,000円+5,000万円毎に13,000円
10億円以下 95,000円+5,000万円毎に11,000円
10億円を超える場合 249,000円+5,000万円毎に8,000円

注:5,000万円毎に13,000円の場合5,000万円以下であれば13,000円

 

公正証書で信託契約書を作成する場合、手数料は表のようになります。

1億円を超えた場合が分かりにくいですが

信託財産が1億3,000万円であれば56,000円(43,000円+13,000円)

信託財産が2億円であれば69,000円(43,000円+26,000円)

となります。

 

公証役場では、「この書類はこの日には存在している」ということを証明してくれる確定日付というものがあります。
この確定日付は、1通につき700円の手数料となります。

自分で信託契約書を作成する場合でも、最低限確定日付は行った方がいいのではないでしょうか。

 

 

信託財産に不動産がある場合は登録免許税

信託財産に不動産がある場合、信託による所有権移転(名義変更)を行わなければなりません。

その場合

不動産の場合は固定資産税の4/1,000

土地の場合は固定資産税の3/1,000

の登録免許税が課税されます。

 

報酬等

民事信託の場合商事信託と違い営利目的ではないので、受託者に対して報酬を0円にするということも出来ます。
受託者が子供であれば報酬を生前贈与とも捉えられるので、報酬を設定することもありでしょう。

また信託監督人や受益者代理人などで第三者を信託契約に組み込む場合、月1万円~の費用がかかってしまいます。

 

 

家族信託契約の流れ

ここまでで

  • 家族信託とは何か
  • メリット・デメリット
  • 家族信託を作成するときに考えた方がいいこと
  • 家族信託にかかる費用

を紹介しました。

実際に家族信託を行う場合

  • どのような家族信託にするかを考える
  • ※専門家に信託設計を依頼する
  • ※信託契約書を公正証書で作成する
  • ※信託登記を行う
  • 信託口口座を作成する

という流れで信託契約を行うことになります。

 

どのような家族信託にするかを考える

家族信託を作成する場合は

  • 何を目的とした家族信託か
  • 目的を達成する為の信託財産は何か
  • 誰に信託するのか
  • どのような信託内容にするか
  • 信託監督人などの設定はするか

ということを考えましょう。

 

 

※専門家に信託設計を依頼する

専門性が高くオーダーメイドで契約書を作成しなければならないので、契約内容は専門家に依頼をすることが一般的です。

専門家に依頼をする場合は、前項で考えたどのような家族信託にしたいかを専門家としっかりと話し合います。

あなたがどのような家族信託を望んでいるのかを知る為に、専門家はここで話し合いをしっかりと行います。

 

ここでの言葉のキャッチボールが信託契約の出来を左右してしまうこともあるので、しっかりと話し合いましょう。

あなたの状況によって

「家族信託よりも遺言などの他の対策の方が適している」

といったことになる場合があります。

相続に精通した専門家であれば、家族信託以外の対策もふまえて対策を検討するでしょう。

信託内容を自身で作成するのであれば、依頼をせずに信託契約書を作成することになります。

 

 

※信託契約書を公正証書で作成する

必ずしも公正証書で作成する必要はありませんが

  • 信託口口座が作成しやすくなる可能性が高い
  • 裁判等になった場合公正証書の方が主張をしやすい
  • 公正証書は紛失しても公証役場で再発行が可能
  • 公証人が作成するので書き損じや不備がない

などの理由から、公正証書で作られることが多いです。

特に民事信託に理解のない銀行で信託口口座を作成使用とする場合は、公正証書かどうかで難易度が大きく異なります。

また自身のみで家族信託を行う場合でも、書き間違いのこともあるので公証人が作成する公正証書の方がリスクが少なくなるでしょう。

 

 

※信託登記を行う

信託財産に不動産がある場合、名義を受託者に変えるために所有権移転の信託登記を行います。

ここで名義を受託者にするからこそ受託者が不動産の管理運用を出来るようになるので、忘れないようにしましょう。

また、あなたが受託者である場合に心に留めておいて欲しいことがあります。

それは名義があなたのものになったからといって、契約内容に沿わない管理は出来ないということです。

 

信託財産の名義は受託者になり受託者が管理運用を出来るようになりますが、それはあくまで信託契約に沿った管理運用です。

例えば「先祖から引き継いだ実家をそのまま受け継がせていきたい」ということで、委託者の家系に引き継がれるような受益者連続信託を作成したとします。

この場合信託契約では、「管理運用については受託者が行えるが処分は出来ない」というような信託内容にします。

「名義が受託者になれば好き勝手管理していい」と勘違いしていると、実家を処分することも出来るように感じてしまいますが、実際には処分は出来ません。

受託者はあくまでも「信託契約に沿った」管理運用しか出来ないということを、心にとどめておきましょう。

 

 

信託口口座を作成する

信託財産は委託者・受託者の公有財産ではなくなるので、別に信託口口座を開設します。

民事信託に理解のある銀行はまだあまり存在しない為、信託口口座開設の交渉は難易度が高くなってしまいがちです。

今後民事信託への理解が銀行側で広まれば自身で開設しやすくなるかもしれませんが、現在ではハードルが非常に高くなってしまっています。

 

 

財産管理の開始

口座の開設まで終わったら、いよいよ受託者が信託財産の管理を行うようになります。

あなたが受託者の場合、あなた自身の財産と混ざらないようにきちんと別々の管理をするようにしましょう。

 

 

家族信託の手続きは専門家に依頼が基本

ここまで家族信託のメリット・デメリットや手続き、費用などについてお話をしました。

ご自分で家族信託の設計を行うことも不可能ではないので、自身で行う場合も視野に入れた記事にしました。

しかし家族信託の設計をするには1年ルールなど、決まりごとや気をつけるべき点が多くありますので、基本的には専門家に依頼することになるでしょう。

 

相続サロン多摩相談センターであれば家族信託普及協会の家族信託コーディネーターであり、日本相続コンサルティング協会の公認相続コンサルタントでもある相続全体の専門家が在籍しています。

家族信託以外にも視野を広げ、あなたにとって最適な相続対策を提案することが出来るので是非ご相談ください。

相続サロン多摩相談センターへの相談はこちらからどうぞ

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古谷

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